患者さんと医師の関係

私は、大学病院で行動変容外来を開設しました。行動変容外来は、患者さんの血圧などのデータだけでなく、生活を取り巻く職場や家庭の状況を伺い生活習慣を改善していただくことを目指しています。患者さんもどんな医者にも家庭のことなどを話す訳ではないので、外来を続けていくうちに患者さんと医師の距離が近づいていきます。

1ヶ月や2ヶ月に1度の外来だけでは十分な時間が取れないので、患者さんに私の携帯番号やメールアドレスを教えたくなることがあります。しかし、医療界では、患者さんに自分の連絡先を教えることはご法度に近いことです。

今更ながら、私は「それはどうしてだろう?」と考えることがあります。

  • 常に連絡が取れる訳ではなく、責任が持てない。
  • 実際に会って診断していないご家族の相談などにコメントすることは責任の所在がハッキリしない。
  • そもそも医師としての発言は記録され、責任を負うべきでその境界がハッキリしない。

など、いろいろあるかと思います。

しかし、昔のお医者さんは、そんなことを考えずに患者さんの相談に乗っていたかと思います。医師は性善説に立つことが難しい職業です。それでも私は、いくつかのことに注意を払い、患者さんに連絡先を教えることがあります。

本日、私の行動変容外来の患者さんが、「私のブログを教材として使いたい」と連絡をくださいました。恥ずかしいですが、嬉しい限りです。

このブログを書いている間に、私の携帯に、コロナ後の患者さんが「横山先生の薬で良くなった。」と喜んで電話をくれました。

私の知り合いで、患者さんに自分の連絡先を教えている医者は殆どいません。連絡先を教えていたのは94歳まで現役で眼科医をしていた母だけです。

母は95歳で現役を退きましたが、母の携帯には患者さんから相談の電話ががかかります。

 

2023年2月22日時点の医師横山啓太郎個人の意見です。