行動変容外来を開設して⑥

ここ数日、行動変容外来についてブログでご説明してきました。

2016年に大学病院で初めて行動変容外来を開設してから、浸透はしているもののその速度が遅いこと、新型コロナウィルス感染症拡大がその浸透を後押しする可能性があることを述べてきました。

 

医療の世界にも様々な環境変化が起こると思いますが、やはり保険制度の改正がキーになることは間違えありません。

行動変容外来を現在の保険で実施するには、保険点数を上げる必要がありますが、それでは経営が成り立ちません。経営が成り立たなければ社会に浸透せず、保険点数の改定は起こりません。

 

経営的には行動変容外来を行う時に通常の診療を保険診療で行い、それ以外の行動変容を促す診療を自由診療と出来れば良いのですが、我が国ではそれが出来ない保険制度になっています。1つの医療機関に同じ日に同じ疾患で保険診療自由診療を受けること(混合診療)が出来ないのです。

 

日本の保険制度について少しご説明したいと思います。

 

我が国の医療は国民皆保険ですべての国民が、ほぼ公平に均一な医療を受けることが出来ます。患者さんは直ぐに医者に薬を処方してもらうことが出来ます。日本の医療制度は世界に類はなく我が国が誇るべきシステムであると考えられます。しかし、高齢者社会が急速に進み社会保障費が国の財政を圧迫しています。

 

医療処置のどこまでが制限されるかという問題は難しい問題ですが、ベースの所は保険診療で、それ以上の処置は自由診療で行うという医療制度をとっている国も多いと聞きます。

大腸癌が肝臓に転移した患者さんに対して手術することは他の国でも一般的です。しかし再度あるいは再々度、再発手術を行った場合は、手術により生命予後が変わらないことも多いです。そうであっても、我が国では患者さんが希望されれば、手術を受けることが出来ます。これは国際的に見れば特殊なことです。

 

我が国もいつかは一定の条件で医療処置を制限する方向に舵をとらなくてはならないでしょう。

あるところまでは保険診療でそれを超える範囲では自由診療を加える混合診療の導入です。

 

混合診療の導入が必然であることは、医療行政に携わる方の中では周知のことではないでしょうか?

しかし、癌の末期の患者さんに対して、たとえ生命予後を著しく改善しない手術でもその施行の選択が自由診療の診療費を払えるか否かで決まっていく医療制度はわが国では受けいられないでしょう。

恐らく、保険診療自由診療を加えていく混合診療は生命予後と直結しない領域(生活習慣病)から始まっていくことが予想されます。

 

そのキッカケは解りませんが、生活習慣病への混合診療の導入は近い将来起こると私は予想しています。そのことは行動変容外来が浸透することを大きく進めるでしょう。

※2020年8月17日時点の医師横山啓太郎個人の意見です。