行動変容外来を開設して②

私は2016年行動変容外来を開設してたことを前回のブログで書きました。その効果やスタッフ及び患者さんの評価が良かったので、これを世の中に浸透させるプロジェクトを開始しました。

先ず、行動変容外来の患者さんを増やしてファクトを作ることから開始しようと思いましたが、私の診れる患者さんの数はせいぜい20-30名です。勿論少ない患者さんからも教えて頂くことが多く、沢山の経験をさせて頂くことになったのですが、より多くの人のデータを解析する必要があります。しかし、外来でデータを集めるのには限界があります。

 

我が国には3つの医療ビッグデータがあります。病院データ、健診・人間ドックデータ、保険会社データです。しかし、どれもが一長一短です。病院データは病名によって区分されているため、疾患を持っていない多くの人に反映することが出来ません。健診・人間ドックデータは毎年定期的にデータをとれていることは素晴らしいのですが、個人のデータが途絶えた時に転勤されたのか亡くなられたかが解りません。保険会社データはどの疾患で入院したとか亡くなられたというのは明確なのですが、保険加入時のデータと経時的なデータが殆どありません。

 

3つのデータの中で、最も優れたデータになる可能性があるのは健診・人間ドックデータです。その有効利用を考えるのに2年以上かかりました。

 

「そもそも、患者さんは何を望んでいるのか?」を突き詰める必要がありました。すると、人生100年時代に多くの人が望んでいるのは寝たきりや認知症の回避でした。実は、医療者は寿命が長くなることあるいは心筋梗塞にならないことが患者ニーズだと考えているのです。論文でエビデンスがあるのは、生命予後や心筋梗塞の発症率の減少なので、医療者は論文からの知識を基に患者さんを診ることになります。ですから、患者ニーズとのギャップに驚きました。その課題(寝たきりや認知症の回避をどうすれば良いか)を多数例でどの様に評価したら良いのかを考えました。例えば糖尿病の患者さんは糖の有効利用が出来ないので経時的に筋肉量が低下して寝たきりになることが解っています。その様な変化を初期から健診・人間ドックデータを用いて解析するプロジェクトを開始することにしました。

また、SOMPOホールディングスの方々を対象にライフデザインドックという新しいスタイルの人間ドックを開始しました。

 

この解析結果を行動変容外来に供給し、新しい保健指導を確立していきたいと考えています。

ファクト作りの後は、行動変容外来の社会浸透です。マスコミへの宣伝や出版物の発刊です。テレビ朝日の「たけしの家庭の医学」で紹介して頂き、C.C.C.メディアハウスから「健康をマネジメントする」を発刊しました。学会でも行動変容の課題で教育講演の指名を受けるようになりました。しかし、社会浸透は今一つなので、友人の勧めで「はてなブログ:医新伝心」を開設しました。ブログの開設は行動変容外来の社会浸透が目的です。Facebookなどで友達を増やし、ブログを紹介するなどマーケティングをすべきと思っています。

 

しかし、行動変容外来が解決しなければならない課題がいくつかあります。それについて次回のブログでご説明したいと思っています。

※2020年8月13日時点の医師横山啓太郎個人の意見です。