不安定な社会で私たちができること

ロシア軍のウクライナ侵攻が毎日マスコミに取り上げられ、数多くの専門家がコメントしています。

私は、国際情勢に詳しくないので、専門家のコメントに納得することも多いのですが、将来のことを問われると明確な解答を述べる専門家が少ないことがわかります。今後の方向性には、国内外の政治、経済、軍事あるいは災害や感染症によって不確実な出来事が大きすぎる気がします。例えばゼレンスキー大統領の身辺に何かが起きたり、原発事故や軍事上のアクシデントによってどのように世界が進むかが全く見えません。

米国大統領がトランプ氏であったら、ドイツの首相がメルケル氏であったら、など考えても不確実な点が多いと思います。

軍事の専門家は経済の専門家ではないですし、経済の専門家は政治の専門家ではありません。

これは、新型コロナウィルス感染症の専門家でも言えることです。ウィルスの専門家は感染防御の専門家ではありませんし、数理モデルの専門家は社会行動学の専門家ではありません。結局、一面だけでは、予想もつかない不確実なバランスで現代社会が成り立っています。

 

そして、新型コロナウィルス感染症とロシア軍のウクライナ侵攻は関係があるとも言われています。欧州の経済が新型コロナウィルス感染症で疲弊しているので、ロシア軍のウクライナ侵攻に対して欧州各国はロシアのエネルギー供給を拒否することができないとプーチン大統領が考えたのでこのタイミングになったという専門家もいます。

将来何が起こるか判らないということだけが、確かとも言えるでしょう。

 

それでは、不確実の時代に我々にできることは何か?ということになりますが、できることは、自分の財産を堅固にすることではないでしょうか?

財産とは、経済的財産、健康財産、人間関係などの社会的財産です。

 

2022年5月25日時点の医師横山啓太郎個人の意見です。

 

相手の印象を指摘する。

私が行動変容外来を行なっていることが原因かもしれませんが、多くの方の相談を受ける機会があります。

相談の中に「Aを行うのとBを行うのとどちらが良いでしょうか?」のような選択を求めるものがあります。

選択は動物の中で人間だけが行う作業です。人に殴られた時に人間以外の動物は逃げることを選択しますが、人間だけは「自分のことを考えてくれたので殴ったのではないか?」と判断を選択します。

人が選択する場合に3つの基準で選択すると言われています。それは「善か悪か」「損か得か」「好きか、嫌いか」です。

しかし、この中で最も強く人の感情を動かすのは「好きか、嫌いか」だと思います。

我々は、人から相談を受ける時に、その人にとって「損か得か」で答えてしまうことが多いと思います。しかし、相談相手は「損か得かについてはよくよく考えて相談に来ることが多いと思います。

ですから、「損か得か」の答えを求めていない場合も多いのです。そんな時は、「Aの話をしている時の方が楽しそうだね。」とか「Aの方が良いって言ってもらいたいんじゃない。」とか、その瞬間の相談相手の印象を指摘した方が腹落ちする場合が多いと思います。本人が迷っているのは「好きか、嫌いか」だと思います。iPhoneの宣伝も機能ではなくiPhoneを楽しそうに使うことを示したものが多いと思います。

レストランよりもキャンプでのバーベーキューを求める人が多くなっています。悩みの多くは「好きか、嫌いか」がわからなくなっている場合が多いと思います。

 

2022年5月8日時点の医師横山啓太郎個人の意見です。

ロシア人の平均寿命

ロシアによるウクライナ侵攻について毎日報道され、気持ちを重くしている方が多いと推察します。

私もその一人です。皆さんはロシア人の男性の平均寿命をご存知ですか?

なんと、68歳だそうだそうです。

https://honkawa2.sakura.ne.jp/8985.html

主要欧米国の男性の平均寿命は79歳ですので10年短命ということになります。

これは、寒さのせいではありません。アイスランドの男性の平均寿命は80歳を超えています。それでは、プーチン大統領は何歳だかご存知ですか?69歳です。つまり、ロシア人の男性の平均寿命を超えているのです。

次のロシア大統領選は2024年です。彼が平均寿命を超えて大統領になることに固執するかのイメージが湧きません。

ゴルバチョフ氏やエリツィン氏は、70過ぎで政界を引退しています。

私たちはロシアに関してほとんど知らなかったと痛感します。

2022年4月20日時点の医師横山啓太郎個人の意見です。

医師の性差による問題

現代は性差よって画一的な意見を述べることはリスクがあります。特に性差問題に関する教育を受けていない私が、医師の精査問題を述べることは覚悟がいることです。

 

数年前に医学部受験で女性に比べて男性が加点されていることが、大きな問題となりました。文科省の指導があり、ほとんどの大学が受験における性差別を排除しています。

 

しかし、医療ではその仕事の適正によって、性差を考えなくてはならない場面があります。大きな外科手術では筋力・体力が必要ですし、心臓カテーテル検査は、被曝することから女性医師に敬遠されることが多いです。

 

一方、患者さんの話を聞く能力は女性の方が優れているという印象を持ちます。私が所長を務める慈恵医大晴海トリトンクリニックでも内科は女性医師が多くを占め、年配の女性の腰痛や膝痛の話をゆっくり聞いていることに頭が下がります。

 

乱暴な分け方ですが、力が要る科は男性が、話を聞く科は女性が適している傾向があると思います。

ところが、一つの科で、力と聞く作業の両方が求められている科があります。産婦人科です。大手術は体力が必要ですが、外来は患者さんにも女性が好まれるケースが多いと思います。

大学病院で手術の名人で著名な産婦人科の教授が、引退後に産婦人科で開業すると全く患者さんが来ないというのはよく聞く話です。

体力のある男性も歳をとると外来中心になりますので、主治医に女性を選ぶ患者さんが増えると長く働くことができなくなるのです。

そのようなことを見越して男性医師が産婦人科を目指さなくなると現在の医療の水準が保てなくなる気がします。

 

医療界はタブーを打ち破ってこれらの問題を考える必要があると思います。

2022年4月11日時点の医師横山啓太郎個人の意見です。

クリニックの実感

新型コロナ感染者数が、先週を超える日がポツポツあり、第7波の可能性が危惧されています。

東京都の新型コロナ感染者数は8千人前後でこれは第5波のピークの倍以上の数値です。しかし、私が所長を務める慈恵医大晴海トリトンクリニックの発熱外来受診患者数は、現在もそれほど多くありません。むしろお子さんから職員の感染が続いていて医療スタッフに複数名の感染者が出ています。この数は第5波とは比べ物にならないぐらい多い印象です。

80%の高齢者の3回目のワクチン接種が終わり、子供へのワクチンが進まない今、高止まりを抜け出すことは出来そうにありません。

現在、新型コロナ感染症に対する経口薬は2種類あります。国産の経口薬は塩野義製薬が開発しています。

しかし、クリニックで経口薬を処方することは制限がかかっていて一般的ではありません。

薬価が高いために多くの人に処方できない。そうすると製薬会社も利益が得られないので薬価を下げることができないというジレンマに陥っていきそうです。今政府が行うべきことは経口薬処方の環境整備と思われます。

2022年4月7日時点の医師横山啓太郎個人の意見です。

スマートフォンでの毛細血管の測定

私は、老化を「外的な負荷を処理できなくなること。柔軟性を失うこと。」と定義しています。

塩が処理できないことが高血圧に、糖が処理できないことが糖尿病に、脂質を処理できないことが脂質異常症に繋がります。この柔軟性は何によって規定されているのでしょうか?

それは、処理する細胞の機能と糖や脂質をその細胞に運ぶ毛細血管量に規定されると考えています。実はその細胞自体も毛細血管によって栄養を受けて機能するので、毛細血管量が低下することは体の柔軟性を失うことと直結します。毛細血管量の減少は、臓器を選ぶことはありません。脳の血管、心臓の血管、腎臓の血管、あるいは皮膚の血管も同様に減少していきます。ですから、脳の老化、心臓の老化、腎臓の老化、皮膚の老化も同様に起こっていくのです。高血圧の人は腎臓や心臓の毛細血管が少ないこと、認知症の人が脳の毛細血管が少ないことが解っています。皮膚の毛細血管が少なく皺多い人はやはり、老化が進んでいると感じることが多いのではないでしょうか?毛細血管密度の低下と高血圧や糖尿病が関連しているということが明らかになっています(Alfons J.H.M. Houben J Am Soc Nephrol 28, 2017.)。

 

この毛細血管の密度の低下は、臓器毎に起こる若ではないので、皮膚の毛細血管の密度を測定することで、食後高血糖や寒冷負荷後の高血圧を診断できる可能性があります。

しかしながら、測定条件が厳しく、撮影に技術がいることからこの方法は広く社会に浸透するにはハードルが高いと思われていました。

一方、スマートフォンでの毛細血管の測定は広く用いられる可能性は期待できるものの、その精度、あるいは従来の統計方法の限界により医学的な信頼性を得ることは難しいと考えられていました。

しかし、最近Nature Medに注目すべき論文が掲載されました。スマートフォンの技術を介して皮膚の状態を確認したり、診断を助けたりする機械学習モデルを、Y Liuたちが開発しました。

5万3870人の糖尿病の患者を含む260万人分のPPG記録を用いて39層の畳み込みディープニューラルネットワーク(DNN)を鍛えあげ、スマートフォンの内蔵カメラで取得したPPGデータから糖尿病を検出できるようにしました。

このアルゴリズムは、2つの個別のデータセットから最大81%の正確さで糖尿病の患者を正しく識別できたと報告されています。

表紙のイラストは、その概念と機能を分かりやすく示したものである。この研究は、広く普及しているデバイスを活用することで、皮膚の状態についての高品質な情報へのユニバーサルアクセスを拡大する、つまり誰もがアクセスできる機会を広げると考えられ、また臨床業務へのデジタル手法の導入を加速することが、予想されます。本論文が表紙を飾ったことからも注目度の高さが窺えます(Nature Medicine VOL 26  October 2020 1576–1582)。

IoTの医療への浸透

アップルウォッチで生体データを把握できても医療の現場で用いられることはありません。医師がその精度に疑問を感じているからです。しかし、ウェアラベルデバイスビッグデーターをAIで解析していく手法はこの壁を超える可能性が期待できます。ディープニューラルネットワーク(DNN)により、精度が上がれば、その解析方法を問題視することが無くなってきます。その手法がNature Medという一流誌に掲載された意味合いは極めて大きいと考えられます。コロナにより、健康リテラシーを上げることと意味を知った国民は、新たな健康管理システムを求めるはずです。ウェアラベルデバイスビッグデーターとAIの組み合わせは、リモート診療だけでなくレストランやフィットネスクラブとの連携を持った健康推進街づくりにもつながるでしょう。

 

2022年3月30日時点の医師横山啓太郎個人の意見です。

近未来リモート診療

近未来リモート診療

 

新型コロナウィルス感染症は日本がIT後進国であることを私たちに教えてくれました。米国の振り込み詐欺はAIがディープラーニングで進化した対応をする音声システムで行われるようになってから、それまで人が行っていた時よりもはるかに効率よく相手をだますことが出来るようになったそうです。

医療の世界でも同じようで保健指導を人間が行うのとバーチャルアドバイザーが行うのとどちらが有効であるかという研究報告が、Mueller先生から報告されました(JAMA Intern Med 2020 Sep 28)。

その結果、バーチャルアドバイザーと人間のアドバイザーは、いずれも歩行時間を週に2時間超増加させたとのことでした。

中高年245人(年齢50歳以上、平均年齢62歳、ラテン系アメリカ人98%)が対象となり、12ヵ月間での歩行時間の増加を比較しています。

新型コロナウィルス感染症の拡大により、人間は感染のリスクを避けるためリモート診療が盛んになるでしょう。そしてバーチャルアドバイザーが用いられることになると思います。人間の習慣の改善を指導するのはAIということになります。

 

このことを皆さんはどう感じられますか?そしてAIに効率的に反応する機能が体内にチップとして埋め込まれたらどうでしょうか?

 

それは「我思う故に我あり。」というデカルトの哲学が通用しない世界です。

 

2022年3月17日時点の医師横山啓太郎個人の意見です。