結論の出ない話を楽しむこと

先日、慈恵医大と関連している企業の方々の行動変容についての講演を依頼されました。

聴衆は、医師、保健師、会社の人事の方など様々な職種の方が、聴衆です。会場に来られる方もいらっしゃいましたが、Webで視聴される方もいました。

専門的な内容は、一般の方には面白くないですし、統計をまとめたようなおざなりな話もいただけません。

また、会場だけであれば、会場参加の方と一方通行でない話し方をするのですが、それだとWebで視聴される方が退屈な場合も出てきます。

あらかじめ、会場で回答してもらう方を準備し、内容も「健康」という一変的な考え方を掘り下げていくように準備しました。特に注意したのは、結論を話すのではなく、聴衆が「健康」を考えることで、講演が終わった後も健康について考えるようなシナリオにしました。

講演は予定通り、終わったのですが、クロージングリマークをした先生が「健康を考えても結論が出ない。」とまとめてしまいました。それこそが講演の狙いだったのですが、むしろクロージングリマークを批判的に聞いてしまった方もいるかと思います。

後悔することは「結論を話すのではなく、聴衆が「健康」を考えることで、講演が終わった後も健康について考えるようなシナリオである」との説明をどこなでするべきだったのでしょう。

結論の出ない話を楽しむことを慣れていない場所では、そのことが失敗だったと思います。

2024年4月10日時点の医師横山啓太郎個人の意見です。

医師の視点と管理者の視点

私の所長を務めている慈恵医大晴海トリトンクリニックでは、今も発熱患者さんを一般の患者さんと厳格にゾーニングして拝見しています。

そのために、1日拝見できる発熱患者数は限られ、受診をお断りするケースもあります。

そのような診療体制を行なっているのは、クリニックの管理上、

  • 他の患者さんにコロナを感染させたら大変
  • スタッフ間でクラスター感染が起きたら大変

などの理由があります。

しかし、先日ある大手銀行に勤める患者さんに伺ったところ「コロナ感染しても本人が大丈夫であれば、マスクして窓口で働いている」ということでした。慈恵医大晴海トリトンクリニックが慈恵医大病院に属するので感染対策には高いハードルを課していますが、一般的な社会とは乖離しているという印象も持っています。その中で、「そろそろ発熱患者さんを、感染対策を行なった上で、一般外来で拝見する。」という提案がスタッフからありました。

私も、それが良いと考えていました。そのことを他の医師に打診したところ「感染数が再度上昇していくという報道もあるので、時期的には適切でないのでは?」という回答が返ってきました。

病院管理としては真っ当な意見と思いましたが、「患者数が増加している時こそ、たくさんの患者さん診るべきではないか?」という医師としての当たり前の感覚が、現場では希薄になっている気もします。

そんな中、慈恵医大では4月から、発熱患者さんの診療体制が大幅に緩和されます。

2024年3月27日時点の医師横山啓太郎個人の意見です。

NEC本社ウェルネスプロモーションセンターで行動変容の話をしてきました。

一昨日、NEC本社ウェルネスプロモーションセンターで行動変容の話をしてきました。

NEC本社ウェルネスプロモーションセンターの保健師の方は、「健診結果によって社員の方に保健指導をしているとのことですが、なかなか社員の方のマインドが変わらない」ということでの講演の依頼です。私が数年前に書いた「健康をマネジメントする」が心に刺さった保健師がいて、依頼を受けるようになったとのことでした。

1.「わかっちゃいるけどやめられない」社員の方のマインドを15分で変えることは、とても困難であること。

2.人は、善悪・損得・好き嫌いの3つの基準で行動を選択すること。

3.そして、その中で最も強力な選択基準は好き嫌いであること。

4.「わかっちゃいるけどやめられない」というのは、損しても好きなことを選択しているということ。

5.その選択に対して、健康になるという損得を提示しても、心にささらないのではないか?

6.健康を損得でなく好き嫌いで選択するような情報提示をするのが良いのではないか?

 

という、内容です。講演の話し方など改善点があったかと思いますが、このような機会を増やしていければと思っています。

2024年3月14日時点の医師横山啓太郎個人の意見です。

行動変容外来の展開

私は、慈恵医大晴海トリトンクリニックで行動変容外来を行っています。その内容に興味を持つ方が多く、今週もNECウェルネスプロモーションセンター、株式会社 タニタの他数社で講演を依頼されました。テレビの取材の連絡もありました。

昨日は、北里大学医学生の方が「行動変容外来のパイオニアの先生のお話を伺いたい。」と来訪されました。

医療関係者の多くの方が、生活習慣病の保健指導に頭を痛めていて、私の著書である「健康をマネージメントする」をお読みになっている様です。コロナ禍で行動変容外来の見学を希望される方をお断りしていましたが、そろそろ再開しようと思います。

しかし、行動変容外来を広げるためには、効率よく診察することとマネタイズであることは明らかです。元祖・行動変容外来を暖簾分けしていくのにはどの様な手法があるのでしょうか?

日本は皆保険で国民全員が医療へのアクセスが容易で薬の服薬が医療の主体になっています。そのことにより、健康リテラシーが返って下がっていることも事実です。

そうは言っても現状の日本の医療の枠の中で行動変容外来を浸透させていくには、従来医療をより価値の高いものにして行動変容外来のプレゼンスを上げることかと思います。

 

2024年2月24日時点の医師横山啓太郎個人の意見です。

フェケアあるいはフェムテック

今度、「会社で女性活躍推進のために知るべき健康課題のリテラシー」についての講演を依頼されました。

当初は、フェケアあるいはフェムテックのように女性の生理的な状況に対しての会社のリテラシーを上げることが主旨でしたが、フェケアあるいはフェムテックのような文言をなるべく使わないようにという希望が主催者からありました。フェケアあるいはフェムテックのような文言には女性社員あるいは男性社員の中で距離をおく人もいるだろうということから、そのリクエストが出たらしいとのことですが、正にそのような日本社会がフェケアあるいはフェムテックに対する問題を棚上げにしてきたのだと思います。

 

それはさておき、女性あるいは男性に対する議論では、中道な考え方よりは、先鋭的あるいは旧来的な意見が表に出てきている印象があります。

松本人志さんや伊藤純也さんの女性問題も週刊誌記事だけでネットが盛り上がっています。その中でコンプライアンスが制限され、その問題点を宮藤官九郎さんが「不適切にもほどがある」というドラマに仕立て上げています。

もはや女性に「髪を切ったの?」と聞く男性はほとんどいません。私は管理者として妊娠している女医さんに「大丈夫ですか?」などの声をかけることがスムーズにできなくなっています。男性がフェムテックに対して声をあげにくい環境が作られていきます。

 

本来、女性活躍推進のために起こっている運動が先鋭化してコンプライアンス制限により、女性活躍推進の場を奪っていくことを懸念しています。

 

2024年2月14日時点の医師横山啓太郎個人の意見です。

 

19歳の少年

私は慈恵医大晴海トリトンクリニックの所長ですが、今年度退官となり、本日、大学の皆さんの前でお話をします。

正直申し上げて40年以上慈恵医大に身を置いて教授職を拝命できるとは思っていませんでした。

しかし、思い返してみますと一人の患者さんがきっかけでここまで来られた気がします。

それは慈恵医大で初めてのHIV患者で血友病の19歳の少年でした。当時HIVは今でいうエボラ出血熱のようで、受け持ちを希望する医師はいませんでした。私はあまり迷いなく受け持ちになりました。

しかし、治療法もなくみるみる悪くなっていきました。彼の血液検体には赤字でMと記され、病院で私と彼だけが違う世界にいるようでした。彼はまもなく亡くなりましたが、それから数年でHIVの治療薬が世に出てきました。私は大きな驚きを感じ、それからはどのような臨床の場でも研究マインドを忘れずに夢中にやってきました。

長いこと透析室の現場のチーフだったので沢山の科の皆さんと働けたのが私の財産です。

本日、大学の皆さんにお礼を述べるとともに、その患者さんにもお礼を述べていと思っています。

 

2024年1月31日時点の医師横山啓太郎個人の意見です。

 

「それはないでしょ?」3連発

 

「それはないでしょ?」というふうに感じたことを3つ書きたいと思います。

愚痴に聞こえたら申し訳ありません。

1つ目は、町名変更です。私の住んでいる町の番地が昨年の11月1日から変更になりました。それまで簡単な連絡はあったのかもしれませんが、シレーっとした感じで変わってしまいました。免許書や勤務先など然るべき施設に連絡を取る必要があるとのことです。区役所に連絡すると郵便物は古い番地を入れても届くらしいですが、宅急便などはいずれ届かなくなるでしょう。ところが、新しい住所をGoogle Mapに入れると、自宅からずいぶん離れた場所に案内されます。一方、古い住所をGoogle Mapに入れると、正しい場所が指し示されます。ということは宅急便業者が新しい住所をGoogle Mapに入れて検索すると私の家には宅急便が届かなくなってしまいます。送迎タクシーを呼ぶ場合もそうです。区役所に問い合わせると「昭和20年代に予定されていたことです。」とのことでした。その頃、Google Mapもなかったでしょう。「それはないでしょ?」という感じです。

 

2つ目も役所関係の話題です。

同居している母は、1日中ベッドで過ごすことが多く、認知機能も落ちています。要介護3の認定を3年前から受けています。先日、母のところに障害者控除認定申請の案内が来ていることを知りました。認知機能が落ちていたり、寝たきりに近い老人の課税に対する優遇措置のようです。区役所に行って申請書を書くと認定されるそうです。しかし、その案内を要介護3の認定を受けている母に通知しても何に返答があるわけもありません。税の優遇を3年間受けれませんでした。「それはないでしょ?」という感じです。

 

3つ目は、自分のリースの車が1年で3回動かなくなったことです。今回は職場の立体駐車場で動かなくなり、午後の仕事をキャンセルしました。車はレッカー移動となりました。「レッカー代、自宅までのタクシー代はお支払いします。」とのことでした。3回の故障はいずれも電気系統の故障でした。1年間で整備工場で修理した期間は1ヶ月に及びます。その間、車は使用できなかったので、リース代を支払うことに納得いきません。その旨をディラーに話してみると「機械ものなので・・・」という回答です。「それはないでしょ?」という感じです。

 

2024年1月17日時点の医師横山啓太郎個人の意見です。