クリニック開設に向けて
私は慈恵医大晴海トリトンクリニックの所長をしていますが、いつかはクリニックを開業したいと思っています。
新型コロナウィルス感染症は4年を経て漸く社会もそのウィルスに慣れてきましたが、慈恵医大晴海トリトンクリニックでは多くのスタッフを抱えていて、スタッフのウィルスにたいする感覚はそれぞれで、その感覚に合わせて運営する時には正解があるわけでなく、多くの局面で妥協も必要となっています。
慈恵医大附属病院ではさらに多業種のコンセンサスが必要で新型コロナウィルス感染症が5類になっても入院患者の家族の方の面会は著しく制限されています。そして新型コロナウィルス感染症患者さんとそれ以外の患者さんをゾーニングするために入院患者数が制限され、感染対策の補助金がなくなると、未曾有の赤字が待っていました。
そんな中で、町のクリニックの位置付けは重要になってきています。しかし、東京都の23区内の新規開業は、経営上困難と言われています。
賃貸でもクリニックへの改築、医療機器購入、人件費、開業してすぐに患者さんが集まるわけではないので生活費を含めて8000万円を準備する必要があるとのことです。
私は65歳なので、10年間働いて黒字になったとしても、今の職に留まった方が金銭的には正しい選択と言えるでしょう。
10年間、お金のことを心配しながらボランティアのように働くことに、どのような意味があるのかを考えた時には、誰に相談しても「やめた方が良いんじゃない?」と言われます。
しかし、これは旅行のようなものかと思います。松尾芭蕉が晩年、奥の細道の旅にでたのと同じような気がします。これから旅の計画を立てたいと思っています。
2024年7月12日時点の医師横山啓太郎個人の意見です。
虚構を作る技術
先日、声優の増山江威子が亡くなりました。
キューティーハニー、峰不二子、バカボンのママなど、多くの声で私たちを楽しませてくれました。私自身、アニメのテロップでお名前を拝見するぐらいでした。私が最も印象的なのはルパンIII世の峰不二子役です。若々しい声を覚えています。
驚いたのは、今回の訃報で紹介された増山さんの年齢です。享年88歳でした。
1977年の『ルパン三世 (TV第2シリーズ)』より、峰不二子役を沢城みゆきさんに交代する2011年まで演じたそうです。ということはおやめになる前は74歳で峰不二子を演じていたことになります。
視聴者は74歳の増山江威子の声で、峰不二子の若々しさをリアルに感じていたことになります。
現在はAI技術が進み幾つかのCMはAIモデルが、普通もモデルさんのように演んじているとのことです。
なんとなく増山江威子が峰不二子を演じていたことと似ている感じもしますが、人間が虚構を作る技術とAIの技術の温度差も感じます。
2024年6月14日時点の医師横山啓太郎個人の意見です。
非風非幡
禅問答の興味深い例文に「非風非番」という例文があります。
幡とは旗のことです。
風になびく旗を見た二人の修行僧が、「あれは風がなびかせているのだ」「いやあれは、旗がなびいているのだ」と言い争って譲りませんでした。
同じ現象を見ても理解が異なることがあります。
この場面では、高僧が「あれは風が揺らしているのでも、旗がたなびいているのでもない、君たちの心が動いているのだ」と説いて二人を納得させたとのことです。
私たちは目の前の現象を理解しようとしますが、「起こっている現象をどのように感じるか?」が神に与えられた人間の能力です。
「考えるな、感じろ」というのは「燃えよドラゴン」という映画でブルース・リーが放った台詞ですが、不確実性の増している社会では、その重要性が増していると思います。
2024年5月17日時点の医師横山啓太郎個人の意見です。
大学の中枢の高齢化
先日、日本の社長の平均年齢が発表され、若年化が進み50代半ばになったとのことです。そのことで日本経済のグローバル化も進み、海外からの評価も高まるとのことです。
翻って大学医学部の中枢のメンバーは、ベテラン教授から選出されることが一般的です。そうなると1番若手で60歳を超えています。大学医学部の中枢のメンバーのベテランになると70歳代のことが殆どと思われます。しかも医学部の教授は、学問の専門家で経営はアマチュアです。さらに言うなら、医学部は、内科、外科など細分化していて、その科の教授が科の運営については主導権を持っています。
縦割りで科の運営に大学の中枢部が手を突っ込むことが難しい構造があります。
我が国の国民の高齢化、コロナなどの疾患の変遷、IoTの導入など大きな変化に大学医学部が立ち遅れていくことが心配です。日本医師会の中枢も高齢化しています。日本の皆保険は世界にも誇れる医療体制です。コロナやインフルエンザ感染での死亡率も他国に比べ著しく低いことが証明されています。そのことが維持されるためには、我が国の医療の構造変化が求められています。
2024年5月1日時点の医師横山啓太郎個人の意見です。
結論の出ない話を楽しむこと
先日、慈恵医大と関連している企業の方々の行動変容についての講演を依頼されました。
聴衆は、医師、保健師、会社の人事の方など様々な職種の方が、聴衆です。会場に来られる方もいらっしゃいましたが、Webで視聴される方もいました。
専門的な内容は、一般の方には面白くないですし、統計をまとめたようなおざなりな話もいただけません。
また、会場だけであれば、会場参加の方と一方通行でない話し方をするのですが、それだとWebで視聴される方が退屈な場合も出てきます。
あらかじめ、会場で回答してもらう方を準備し、内容も「健康」という一変的な考え方を掘り下げていくように準備しました。特に注意したのは、結論を話すのではなく、聴衆が「健康」を考えることで、講演が終わった後も健康について考えるようなシナリオにしました。
講演は予定通り、終わったのですが、クロージングリマークをした先生が「健康を考えても結論が出ない。」とまとめてしまいました。それこそが講演の狙いだったのですが、むしろクロージングリマークを批判的に聞いてしまった方もいるかと思います。
後悔することは「結論を話すのではなく、聴衆が「健康」を考えることで、講演が終わった後も健康について考えるようなシナリオである」との説明をどこなでするべきだったのでしょう。
結論の出ない話を楽しむことを慣れていない場所では、そのことが失敗だったと思います。
2024年4月10日時点の医師横山啓太郎個人の意見です。
医師の視点と管理者の視点
私の所長を務めている慈恵医大晴海トリトンクリニックでは、今も発熱患者さんを一般の患者さんと厳格にゾーニングして拝見しています。
そのために、1日拝見できる発熱患者数は限られ、受診をお断りするケースもあります。
そのような診療体制を行なっているのは、クリニックの管理上、
- 他の患者さんにコロナを感染させたら大変
- スタッフ間でクラスター感染が起きたら大変
などの理由があります。
しかし、先日ある大手銀行に勤める患者さんに伺ったところ「コロナ感染しても本人が大丈夫であれば、マスクして窓口で働いている」ということでした。慈恵医大晴海トリトンクリニックが慈恵医大病院に属するので感染対策には高いハードルを課していますが、一般的な社会とは乖離しているという印象も持っています。その中で、「そろそろ発熱患者さんを、感染対策を行なった上で、一般外来で拝見する。」という提案がスタッフからありました。
私も、それが良いと考えていました。そのことを他の医師に打診したところ「感染数が再度上昇していくという報道もあるので、時期的には適切でないのでは?」という回答が返ってきました。
病院管理としては真っ当な意見と思いましたが、「患者数が増加している時こそ、たくさんの患者さん診るべきではないか?」という医師としての当たり前の感覚が、現場では希薄になっている気もします。
そんな中、慈恵医大では4月から、発熱患者さんの診療体制が大幅に緩和されます。
2024年3月27日時点の医師横山啓太郎個人の意見です。
NEC本社ウェルネスプロモーションセンターで行動変容の話をしてきました。
一昨日、NEC本社ウェルネスプロモーションセンターで行動変容の話をしてきました。
NEC本社ウェルネスプロモーションセンターの保健師の方は、「健診結果によって社員の方に保健指導をしているとのことですが、なかなか社員の方のマインドが変わらない」ということでの講演の依頼です。私が数年前に書いた「健康をマネジメントする」が心に刺さった保健師がいて、依頼を受けるようになったとのことでした。
1.「わかっちゃいるけどやめられない」社員の方のマインドを15分で変えることは、とても困難であること。
2.人は、善悪・損得・好き嫌いの3つの基準で行動を選択すること。
3.そして、その中で最も強力な選択基準は好き嫌いであること。
4.「わかっちゃいるけどやめられない」というのは、損しても好きなことを選択しているということ。
5.その選択に対して、健康になるという損得を提示しても、心にささらないのではないか?
6.健康を損得でなく好き嫌いで選択するような情報提示をするのが良いのではないか?
という、内容です。講演の話し方など改善点があったかと思いますが、このような機会を増やしていければと思っています。
2024年3月14日時点の医師横山啓太郎個人の意見です。