行動変容外来を開設して①

私は2016年に大学病院で初めて行動変容外来を開設しました。慈恵医大の腎臓・高血圧内科で約30年生活習慣病の患者さんを診ていても薬を出すだけで、生活習慣の改善に結びつかないことを痛感したからです。生活習慣の改善が重要であることは多くの医療者が認識していますが、多くの問題点があります。

  • 患者さんに生活習慣に結びつく行動変容を起してもらう手法が解らないこと。
  • 我が国の医療費が安く、手軽に生活習慣に治療薬を得ることが出来ること。
  • 患者さんに行動変容を起してもらうには診療時間が長くかかり、医療者の負担が大きく収益に結びつかないこと。
  • 診療で用いている血圧や血糖の値を目に見えて低下させるのは薬物療法が一番有効であるということ。

があります。

 

其々の課題について私が行っている取り組みについてご説明することにします。

  • 患者さんに生活習慣に結びつく行動変容を起してもらう手法が解らないこと。

これに関しては、米国でLifestyle Medicineという診療方法が進んでいましたので、それを取り入れることにしました。健康を資産として考えてコーチングしていく手法です。患者さんと同じ方向性を持つことが重要なのですが、それにはスティーブン・コヴィーの7つの習慣を参考にしました。

 

  • 我が国の医療費が安く、手軽に生活習慣に治療薬を得ることが出来ること。
  • 患者さんに行動変容を起してもらうには診療時間が長くかかり、医療者の負担が大きく収益に結びつかないこと。

「我が国の医療費が安く、手軽に生活習慣に治療薬を得ることが出来ること。」は悪いことではないですが、生活習慣の改善をめざそうとしている患者さんには、それにマッチした診療方法が必要です。そのために行っているのが医師―看護師―栄養士のチームで患者さんに対応することです。薬だけを望む患者さんと行動変容を望む患者さんを分けて、薬だけを望む患者さんには待ち時間も少なくして診療時間も短縮する、行動変容を望む患者さんには、医師―看護師―栄養士のパッケージ診療を提供することにしました。

 

  • 診療で用いている血圧や血糖値を目に見えて低下させるのは薬物療法が一番有効であるということ。

評価している指標(血圧や血糖値)が、薬によって最もコントロールされるのであれば、薬の診療が主体になります。しかし、その値が本当に生命予後改善に大きなインパクトを与えるのでしょうか?

私たちが診療で参考にしている血圧や血糖値は定点のものですが、実は血圧変動や血糖変動など動的な数値が生命予後に大きな影響を与えることが解ってきました。今までは測定できなかったこれらの動的数値がウェアラブルバイスで測定できるようになってきました。そこで、行動変容外来の一部の患者さんでは持続血糖が見える化されているフリースタイルリブレを装着いただき診療に用いています。1年間ジョギングを続けたら、ウェアラブルバイスの脈拍数が徐々に落ちてきたことを報告してくれる患者さんがいらっしゃいます。その効果を拝見すると嬉しい限りです。

 

次回のブログでは、開設後の展開についてご説明させて頂きます。

※2020年8月12日時点の医師横山啓太郎個人の意見です。