縦割り医療

水準を保ち均一な医療を提供するために各学会はガイドラインを基に診療することを提唱しています。ガイドラインの元になるのが論文であり、査読という関所を通過したことにより論文の公正さが担保されると考えられています。

この医療の体系をevidence based medicine(EBM)と呼び、どの医者が見ても一定に量が提供できると信じられています。

しかし、そのようなマニュアルができると、自分の専門以外の疾患に手を出すことは医療者のリスクに結びつくので、急速に縦割り医療が一般的となってしまっています。

そのことに拍車をかけたのが、新型コロナウィルス感染症の流行です。

  • 熱がある患者さんを診ると他の患者さんが診れない。
  • 重症になる可能性がある患者さんは自分達では診れない。
  • コロナの患者さんを受け入れすぎると通常の手術ができなくなるので一定数以上のコロナ患者さんは診れない。

など、1つ1つの理由は正しく、それを守っていれば、自分は正当だと感じてしまう印象あります。

  • 他の患者さんがいるけれど、どうしたら熱がある患者さんを診ることができるか?
  • 自分達では診れないかもしれないが、重症になる可能性がある患者さんのニーズに応えられないか?
  • 通常の手術ができなくなるので一定数以上のコロナ患者さんは診れないかもしれないが、最大限コロナ患者を受け入れられないか?

などと知恵を出して考えていく必要があると思います。しかし、苦労した医師の経験は、縦割り医療に使って自分は正当だと考えている医療者には伝わりません。それらの医療者は、自分が責任を追わなくなった時点で、断った患者さんは自分の影響の輪の外側に行ってしまうからです。

この流れは、日本の医療にとって大きな火種となるでしょう。

 

 

2023年1月12日時点の医師横山啓太郎個人の意見です。