赴任してきた若手医師に行動変容診療を紹介したら・・・。

私は大学病院で初めて行動変容外来を設立し、また、新型コロナウィルス感染症で「行動変容」という言葉が浸透し、私の所にも何件か取材が来ましたが、身近な「行動変容」に関係するお話を紹介します。

4月から私のクリニックに勉強熱心な若手医師が赴任しました。

とても熱心なので期待していたのですが、初対面の患者さんに「このデータが悪いと合併症が起こりやすい。」「糖尿病は一生治りません。」と説明してしまいます。
診療についている看護師は、患者さんがショックを受けないかハラハラしている様子です。

彼の外来の様子を窺ってみると
1.データが悪くなって、合併症のリスクが高まりました。
2.薬を増やしましょうか?
3.果物によって肥満になるとインスリンが効きにくくなります。
4.運動しましょう、マスクは熱中症の原因になります。
5.元々、膵炎があるので中性脂肪が高いと膵炎が悪化するリスクが増えます。

どれも正しい内容でした。
10分以上はかけて熱心に説明していました。
しかし、患者さんの行動変容は恐らく起きません。

こんな時に、若手医師にどの様に説明すれば、良いでしょう?
私は、彼が熱心であることを称えました。
そして残念ながら、説明したことの殆どは患者さんに理解されていないので、効率が悪いことを説明しました。

そして、行動変容診療関連の2冊の本を貸しました。
1週間経ち、本日彼の診察風景を観察していると見違えるように進歩していました。

今回、私が彼にアドバイスする時に気を付けたのは「熱心な彼の在り方」は正しく、「彼の診療のやり方」の効率が悪いということです。
私たちが人にアドバスする時に「あり方」ではなく「やり方」について語ることに注意を払う必要があります。
つい「あり方」についてアドバイスすると相手は腹が立つだけです。

このことは、生活習慣病の患者さんが努力してもデータが悪くなった時にも当てはまります。
明王エジソンも「失敗なんかしちゃいない。上手く行かない方法を700通り見つけただけだ」という名言を残しています。

※2020620日時点の医師横山啓太郎個人の意見です。