新型コロナウイルス感染症の政治の判断の難しさと、患者ファーストの重要性について

新型コロナウィルス感染症の拡大に伴い、多くの国の指導者たちはその支持率を上げているといいます。
しかし、日本の指導者は、今回の新型コロナウィルス感染症で支持を得ている人は少ないように思います。

もし、自分が政治家であれば国民の支持を得たいと思うのは当然ですが、感染症に対するリスクと何を天秤にかけるかについては正解が見えず、政治家の方も苦労しているのだと思います。

思えば、4月の中国の習主席の来日を意識して中国からの人流のコントロールが遅れ、東京都は2020東京オリンピックの開催を目指して、この感染症の脅威を完全に見誤りました。

PCR検査が進まないにはそれなりの理由があるのに、「12万件は出来る能力がある。主治医の先生が必要と考えたPCR検査を実施できる体制を確立した。」と答弁してしまいます。
実際には東京都では1000件を超える検査は出来ていませんし、1つの区で40件できるところは数えるほどです。

ただし、新型コロナウィルス感染症の死亡率は世界各国で極めて低い水準を維持しています。
一方、自宅待機中の患者さんが亡くなったというニュースが入ってきます。

国会でも「政府の失政のせいで、PCR検査が進まず、尊い命が失われた。」と野党が叱責すれば、政府は「37.5℃4日間というのは目安に過ぎなかった。目安は目安だ。」という本質とは離れて、「誰が責任をとるのか?」という視点で私から見ると患者不在の議論が行われている印象です。

それを受けてか、PCR検査の基準が変わることが検討されています。
1.息苦しさ、強いだるさ、高熱などの強い症状のいずれかがある。
2.高齢者や基礎疾患がある人で、発熱やせきなどの比較的軽い風邪症状がある。
3.比較的軽い風邪が続く。
のどれかがあれば、新型コロナウィルス感染症を疑いかかりつけ医に連絡をすることになるといいます。

日本の高齢者人口は約3,500万人と試算されています。

高齢の方が発熱やせきなどの比較的軽い風邪症状があるだけで受診された場合、PCRなどできる訳がありません。

一般人口の中で、どの程度の方が比較的軽い風邪症状になるかは知りませんが100人に1人としても35万人がこれに該当します。

どれだけPCR検査を増やしても到底測定できない患者さんがでてこられます。



他国と比べて、多い少ないのレベルではありません。
もし、PCR検査が進まないことを冷静に判断する政府と国民であれば、今回のような指針の変更は、もっと十分に議論されていたかもしれません。

1人の命も失わないことと、医療政策をどの様に導くかは全く別の問題です。
政府のいうことを信じて、クリニックに足を運ぶ患者さんはどうすれば良いのでしょうか。

政治家の皆さんには政治家としての立場だけでなく、もう少し患者ファーストの立場で、しっかりとした判断を期待したいと思います。

※2020510日時点の医師横山啓太郎個人の意見です。