新型コロナウイルス感染症拡大の中で行動変容の重要性を考える

皆さんは、新型コロナウィルス感染症拡大の中、ご自分が置かれた状況をどの様に考えていらっしゃいますか?

次の2つの文章は全く同じ事実を語っていますが、受け取り方は随分違うと思います。

1,日本では約1万人の患者さんがいて、約200人が亡くなっていて死亡率は2%です。
当初、コロナウィルスは風邪のウィルスで約80%は軽症と言われていましたが、恐ろしいウィルスであることが解っています。
無症候性の患者が感染拡大を起し、実際には報告の10倍あるいは100倍の患者がいると思われています。
私たちもいつ感染するか解りません。

2,新型コロナウィルスの致死率は2%と思われていますが、実際には無症候性の感染者が多く日本での感染者も報告の1万人の10倍あるいは100倍の感染者がいるとも言われています。
そうであれば、実際の致死率は0.2%から0.02%となりますし、既に多くの人が感染し治癒しているかもしれません。

このように同じ事を語っても、その語り方によって伝わり方は大きく異なります。
それを良く意識しないと聞き手も意図しない方向に行動を変えてしまいます。

医療の世界でもそのようなことが多くあります。

「術後1カ月の生存率は90%です。」と説明すると80%の患者さんが手術を受けると言われていますが、「術後1カ月には10%の患者さんが亡くなります。」と説明すると50%の患者さんしか手術を受けなくなることが解っています。

私が行っている行動変容外来でも「ダイエットしないと10%心筋梗塞になりますよ」と言ってもダイエットしない人も、「ダイエットしないで歳を重ねると、体の重さに耐えられず膝を痛めて体が動かなくなりますよ」というとダイエットする人が増えます。
これは、患者さんが、少ないリスクでも必ず起こりそうなことを避ける傾向があるからです。

このように、内容だけではなく、伝え方を工夫することで、本人に行動の必要性を自覚させ、行動変容を起こすことが可能になります。

話を新型コロナウイルス感染症の話に戻しますと、
小池都知事が「外出の自粛は求めますが、スーパーなどの日用品は今まで通り買い物に行って大丈夫です。」と会見で述べた後、スーパーへの人出は会見前に比べ増えてしまいました。
「今まで通り買い物に行って大丈夫です。」と言うのは日用品の買い占めをしなくても大丈夫との意図であったと思いますが、外出自粛要請のインパクトは下げてしまったと思われます。

安倍首相の「人との交流を8割、少なくとも7割」との発言も「少なくとも7割」の方を選んでしまう国民が多いのではないでしょうか?
これも自粛要請と経済のバランスを考えてしまったのかもしれません。
リーダーはその言葉によって国民がどの様に動くかを考える必要があります。

私は国だけでなく、皆さん個人も行動変容を考えることが重要だと考えています。


新型コロナウイルス感染症による様々な変化に対し、リモートワークをしているみなさんも、まさにこの瞬間を時代が変わるチャンスだと捉え、まさに新しい習慣を得るなどチャンスに変えることが可能です。
是非、この機会に内なる声に向き合い、自分自身にどの様な変化を与えるかを考えることで、みなさんの人生を良い方向に行動変容させていくことができるのではないでしょうか。

※2020年4月18日時点の医師横山啓太郎個人の意見です。