行動変容外来的新型コロナウィルス感染症の捉え方

新型コロナウィルス感染症の新規感染者数が毎日報道され、皆さんもその結果で一喜一憂してしまうと思います。マスコミが煽っている印象もありますが、総理や都知事も「4月の状態と異なる」と説明した論調から変化して、国民に注意を喚起するようになってきています。しかし「このままだと大変なことになる。」という説明だけでは国民の行動変容を起しません。国民は既に十分頑張ってきました。

これは糖尿病患者さんに「放っておくと透析になる。」と言っても患者さんの自己管理は改善しないことと似かよっています。患者さんもデータが良くなるように十分頑張っているのです。行動変容外来では患者さんに具体的な将来の提示し、その対策について話し合っています。

 

行動変容外来では医師の立場と患者さんの立場をすり合わせ、共通の意識を持つように努めています。そのために医師は先ず患者さんに信頼を得なくてはいけません。間違いや誤解を是正する必要があります。総理や都知事にはアベノマスクや東京アラートのことを清算することについて国民に丁寧に説明することが望まれます。

 

次に行動変容外来で気を付けていることは、患者さんが望んでいる情報を供給できているかということです。

 

今、国民が求めている情報はWith Coronaで1年後にどの様な生活を行っているかについてでしょう。それを解決してくれるのが、治療薬、ワクチン、検査体制と考えてらっしゃるのではないでしょうか?

医療が進歩することは日々の新規感染者数と比べて、個人個人の生活様式に大きな影響を与えるはずです。医療で起こっている進歩についての説明を国民が求めているならば、指導者もマスコミも其れに応えるべきでしょう。

 

アビガンなどは特効薬にはなりえず、ワクチンに実用化には2年はかかるでしょう。実は最も進歩しているのは唾液によるPCRや抗原検査と思われます。     

 

インフルエンザと新規コロナウィルスの大きな違いは、新規コロナウィルスでは隔離期間が10日間とインフルエンザの約3倍であることと、急性増悪があることでしょう。

 

検査についてですが、当初は数時間かかった検査が1時間以内に、しかもクリニック(場合によっては家庭)で行われるようになっていくと思います。これは今年中に整備されることが期待できます。

 

飛沫感染接触感染の多くは唾液中のウィルスによって感染していきます。唾液中にウィルスがいなければ、自分が感染していても他の人にうつすリスクはかなり低いかもしれません。そうだとすれば唾液中のウィルスを抗原定性検査でチェックできるようになると隔離期間が短縮する可能性があります(抗原定量検査は感度が飛躍的に上がり、従来のPCRより迅速に結果が出ますが、測定機器が必要です。近い将来PCRに変わる検査となる可能性があります。)何回か抗原定性検査を行い、陰性を確認することにより隔離期間を短縮することが期待できるかも知れません。現在の抗原定性検査の感度は低いですが、この感度を上げることが重要です。

 

もう一つは重症化早期発見アプリの開発です。濃厚接触アプリは普及していませんが、重症化早期発見アプリと濃厚接触アプリを組み合わせることで広くアプリが普及することが期待できます。そうすれば、保健所の仕事量は大幅に軽減できます。

 

この2つが実現できれば新型コロナウィルスは2類感染症から外れ、若い人は感染しても自宅でリモートワークを10日間行うような生活が確立されるかも知れません。その様な就労形態に変化することが企業にとっても収益に結びつくことになるでしょう。

 

ただ、気を付けるべきことは、これらの開発の競争は激しく企業は開発に大きなリスクを抱えます。抗原検査がファーストチョイスになればPCR検査を開発している企業は打撃を受けます。開発には国の支援が必要と思われます。

 

行動変容外来でも医師と患者の関係が良好であれば、患者さんの行動変容が続きます。

リーダー適切な政策を示し、リーダーと国民の関係が良好になれば、国民の行動変容に繋がり、リスクばかりを報道するマスコミの姿勢も変わってくると思われます。

※2020年7月30日時点の医師横山啓太郎個人の意見です