攻めのPCR検査が難しそうであるということ

体がだるい若い男性が、受診されました。私が所長を務める慈恵医大晴海トリトンクリニックでは、発熱と咳があるかで発熱外来で診察するか一般外来で診察するかを決めています。

この患者さんは「体がだるい」だけなので一般外来で診察しました。新型コロナウィルス感染症は無症候性感染の患者さんもいらっしゃるので、「体がだるい」だけでも新型コロナウィルス感染症に罹っている可能性があります。私のクリニックは中央区PCRセンターにPCR検査を依頼しますが、中央区在住でないとPCR検査は出来ないので、最初にPCR検査を希望されるかを伺います。軽症で中央区在住でない方が、PCR検査を希望されて来院した場合は、ご自宅の近くのクリニックへの受診を薦めます。

 

しかし、今後は中央区在住でないPCR希望の患者さんを診察するためにクリニック内でPCR検査や抗原検査が出来るような体制を作る必要があるかもしれません。

現在、クリニック内でPCR検査や抗原検査を行うためには都への申請が必要です。その場合、一般患者さんとコロナ疑いの患者さんが接触しないようなゾーニングが出来ていることが、検査の許可の条件です。都内はビルの中のクリニックも多いと思いますが、患者さんがエレベータでクリニックに受診する場合はゾーニングが難しくなります。他の患者さんのリスクあるいは印象、スタッフのリスク回避を考えると正直申請に躊躇してしまう現状があります。中央区も300-400のクリニックがあると思いますが、現在、クリニック内でのPCR検査を申請しているクリニックは7つのみであると聞いています。

 

PCR件数を増やすことによって感染拡大をコントロールすべきとの意見があります。しかし、PCR検査を行っても感染者の30%近くは見逃してしまうことや検査後にも直ぐに感染してしまうリスクがあることから、体温を測るぐらいの簡便さで測定できないと感染者数をコントロールすることは難しいかもしれません。しかし、現在PCRは件当たり2万円弱のコストがかかっています。測定件数が増えれば今より安価になると思いますが、国民全体に気軽にPCRを測定できる財源は何処にあるのでしょう?

東京都の1400万人が1カ月に度PCR検査をするとしたら年間で2兆円です。

ゴールデンウィーク後のように東京都の感染が1桁になっても再燃するのでこれを有効なワクチンや治療薬が出来るまで続けなくてはいけません。

勿論、東京都全員にPCRはしなくても良いと思われますが、旅行に行く前、受験生等の様々なシチュエーションを考えると相当数が必要になってしまうでしょう。

 

コスト面から考えるとリモートワーク推進し、ゴールデンウィークの生活を基盤とした経済の活性化に財源を投入することが現実的と思われます。

最近、患者さんから話を聞いてもリモートワークでなくなった方が急増しています。やはり政府の何らかのメッセージは重要なことを実感しています。

 

※2020年7月20日時点の医師横山啓太郎個人の意見です