新型コロナウィルス感染症の重症化のイメージ

新型コロナウィルス感染症は肺を犯すことによって重症化します。しかし、一般的な細菌による肺炎とは異なります。

 

肺は口から気道を越えると小さな風船がブドウの房のように枝分かれしていて、吸気に送り込まれた酸素が肺の隅々の小さな風船すなわち肺胞の中に入っていきます。肺胞の壁には極めて細い血管が分布していて、そこを流れる血液は肺胞から酸素を得てから心臓に戻り、体全体に送り込まれます。

 

一般的な肺炎はブドウの房の空気が入っている部分に細菌が増殖するので、病巣は肺全体に広がるというよりも細菌がいる部位での細菌と免疫細胞の戦いになります。その戦いの燃えカスを示す汚い痰がでます。知らないうちに肺全体を犯すことは稀にしかありません。

しかし、新型コロナウィルス感染症は肺胞の壁と細い血管が病気の主座なのでウィルスがいれば肺胞の壁に沿って、痰もなく肺全体に広がります。肺胞の壁と細い血管で起こっていることは、免疫細胞の活性化とそこで傷ついた血管を修復するために起こる血栓です。

肺から酸素を心臓に運ぶ細い血管が血栓で詰まってしまえば、血液中の酸素飽和度は低下します。そして多くの血管で血栓が出来れば重症化し、回復しても肺は不可逆的な傷害を受けるので後遺症に苦しみます。

 

免疫の活性化⇒血栓が重症化のカギになると考えられています。若い人が川崎病様の皮膚病変がでたり、脳梗塞になったりするのも同様の現象(免疫の活性化⇒血栓)が起こっていると考えられます。

新型コロナウィルス肺炎は高齢者や喫煙者で重症化することが明らかになっています。勿論一般の細菌性肺炎でも高齢者や喫煙者で重症化するのですが、これ程明確な死亡率の差が出るのにはコロナウィルス感染症の重症化の機序によると思われます。これらの人は、機能している肺胞の壁や細い血管が少ないのです。高齢者は細い血管の余力がないのです。

現在もコロナウィルスをやっつける薬が開発されていますが、免疫の活性化⇒血栓の進展を抑える既存の薬の治療法が注目されています。

 

※2020年7月22日時点の医師横山啓太郎個人の意見です