新型コロナウィルス感染症の自宅待機で亡くなられた方が報告され、緊急性の高い症状は何かということが議論されるようになりました。
私のブログでは、4月4日の「地震災害時と同じように準備しておいてください」の記事の中で「軽症で自宅待機の時に、どの様な変化が起こったら病院に行くかということを国民には知らされる必要があります。」と主張しました。
厚労省でも「新型コロナウィルスの緊急性の高い13症状リスト」を4月28日発表し、新聞各紙に掲載されています。
この内容は「もしかしたら、コロナかな?」と思っていても、簡単にクリニック受診やPCR検査が出来ない今、重要な提案であると思います。
一方で、13項目もあると、不安でたまらなくなってしまうのではないかと考えています。
以下が発表された13項目になります。
1.生活をしていて少し動くと息苦しい
2.息が荒くなった(呼吸数が多くなった)
3.肩で息をしている
4.横になれない。座らないと息ができない
5.急に息苦しくなった
6.突然(2時間以内を目安)ゼーゼーしはじめた
7.唇が紫色になっている
8.顔色が明らかに悪い
9.胸の痛みがある
10.脈がとぶ、脈のリズムが乱れる感じがする
11.いつもと違う、様子がおかしい
12.ぼんやりしている (反応が弱い)
13.もうろうとしている (返事がない)
この13項目はそれぞれ、関係しているので、1つの症状だけで他には全く症状が当てはまらないことは稀だと考えますが、まず新型コロナウィルス感染症の病気の成り立ちから症状を解説したいと思います。
新型コロナウィルスは肺炎球菌などの一般の細菌性感染と異なる病気の進み方をします。
肺は右肺が3つ、左肺が2つの部分に解れ、5つのパーツから出来ており、それぞれが気管から枝分かれする気管支でつながっています。
その気管支はさらに細く枝分かれして肺胞という酸素交換を行う小さな袋の様になっていきます。
見た目は丁度ブドウの房のような構造です。
一般的に細菌性感染はこの袋の中に細胞が入り込み、そこで細菌と白血球が戦い黄色や緑の痰(たん)を作り出します。
従って、一変に5つのパーツ全部が侵されることは珍しいです。
ただし、新型コロナウィルスは肺胞の壁に沿って進展していく特徴があるため、区域性がなく、5つのパーツ全てを同時に侵す危険性があり、痰(たん)は少なく、急速に進行するリスクがあります。
その結果、肺での血液の酸素化が低下したり、肺のパートを囲む胸膜も犯すので痛みを伴うことがあるのが、一般的な細菌と異なります。
以上、新型コロナウィルス肺炎の特徴的な病態です。
厚労省の13症状のうち、
1.生活をしていて少し動くと息苦しい、2.息が荒くなった(呼吸数が多くなった)、3.肩で息をしている、4.横になれない。座らないと息ができない、は酸素化の低下による呼吸の変化です。
新型コロナウィルス感染症で発熱している、倦怠感があると安静にしているので症状が隠れていることがありますが、肺での血液の酸素化が低下していることは肺の予備能が低下していることを意味します。
いつもは感じないような運動時の息切れをすることは重要なサインです(生活をしていて少し動くと息苦しい)。
これは、酸素濃度が維持できないと、呼吸回数で酸素の総量を稼いだり(息が荒くなった:呼吸数が多くなった)、呼吸を大きくして足りない分を代償しようとする(肩で息をしている)ことにつながって起きた結果です。
酸素化する時に重要なのは、背中側の肺なので、仰向けで横になると背中側の肺の働きが悪くなります(横になれない。座らないと息ができない)。
従って、1つだけで、他の症状が全くでないことは考えにくく、いつもは感じないような運動時の息切れをすることが共通のサインと思われます。
また、5.急に息苦しくなった、6.突然(2時間以内を目安)ゼーゼーしはじめた、は新型コロナウィルスは肺胞の壁に沿って進展していくので、区域性がなく、5つのパーツ全てを同時に侵す危険性があります。
そのため痰は少なく急速に進行するリスクがあることと関連します。
そして、7.唇が紫色になっている、8.顔色が明らかに悪い はチアノーゼといって血液中の酸素濃度が低いことと関連しますが、これも1-6で記載した肺の酸素化が皮膚症状で見られていると考えることが出来ます。
また、9.胸の痛みがある、新型コロナウィルス肺炎は肺のパートを囲む胸膜も犯すので痛みを伴うことになりますが、これは一般的な細菌と異なる症状です。
最後に、10.脈がとぶ、脈のリズムが乱れる感じがする、11.いつもと違う、様子がおかしい、12.ぼんやりしている (反応が弱い)、13.もうろうとしている (返事がない)は、血液の酸素化の低下は心臓や脳にも影響を与えているので、脈が飛んだり、意識状態がぼんやりしたり、もうろうとして、いつもと違うと感じられる症状が起きた状態です。
解説は以上になります。
病気の仕組みを理解することで、新型コロナウイルス感染症に対して、少しでも安心して頂けたらと思い、この記事を書きました。
※2020年4月29日時点の医師横山啓太郎個人の意見です。