新型コロナウィルス感染症に対しての仮説

若い人は重症化せず、高齢者が重症化することについて考えてみました。

人は生きている間に数々の感染症に罹ります。赤ちゃんの頃は、最初はどの様なウィルスや細菌に罹るか解らないのですが、一度かかるとウィルスや細菌の情報が記録されて、次には罹り難くなったり、罹っても軽症となります。2回目の感染を大事にしない免疫が獲得免疫といって、この免疫防御機能の中心的な役割を演じるのが抗体です。この仕組みを利用するのがワクチンです。生まれてから2歳ぐらいまでは母親から受け継いだ免疫が機能するのですが2歳を超えるとその機能は弱まり、この時期に多くのウィルス感染症に罹ることがあります。

高齢者はそれまで生きてきた中で多くの獲得免疫を所有しています。

 

未知のウィルスに生体が最初に反応するのはこの獲得免疫でなく自然免疫です。獲得免疫と異なり自然免疫は年齢と共に低下していくことが解っています。

既存の知識には高齢者が強いが、新しい知識を得るのには若い人が強いのと同じように、未知のウィルスに対する初期段階は若い人の免疫防御機構が優れていると考えられます。

新型コロナウィルスは、感染してからの約4日(最大14日)後に風邪のような症状が出現します。若い人の殆どは自然免疫機能が強いのでここで治ってしまうのでしょう。

 

そして重症化する症例は発症から1週間前後で肺炎の症状(咳・痰・呼吸困難など)が強くなってくることが分かってきています。この時期には抗体が産生されて本格的な免疫防御機構が作動します。このシステムは高齢者で成熟していますが、むしろそのことがアダになってしまうのでしょう。本格的な免疫防御機構はウィルスだけでなく、自分自身の組織(多くは血管)を傷害させてしまうのです。これをサイトカインストーム・免疫の暴走と呼ぶことがあります。傷害を受けた組織を修復するために細い血管に血栓が出来て肺炎や腎不全が進行することになります。このような病態を想定すると自然免疫機能が高い若い人が重症化しない事が分かります。

新型コロナウィルスの病態を細い血管の免疫亢進⇒血管の傷害⇒血栓形成と考えると欧米人がアジア人より重症化することは腑に落ちます。欧米人は血栓病の合併が多いことが分っています。

 

そう考えると治療薬の投与するタイミングが見えてきます。

感染してからの約4日(最大14日)後に風邪のような症状の時は、抗ウィルス作用があるオルベスコ(シクレソニド)やアビガン(ファビピラビル)、発症から1週間前後で肺炎の症状が出る時期には免疫を暴走させないステロイド(デキサメタゾン)やアクテムラ(トシリズマブ)、さらにこの時期には抗血栓療法のフサン(ナファモスタットメシル酸塩)やアスピリンなどの治療が有効なことが想定されます(フサンはウィルスの細胞内侵入抑制も期待されているので初期から投与しても良いと思います)。

勿論、仮説にすぎませんが、もし私が新型コロナウィルス感染症に罹ったら、そのような治療法をリクエストしたいと思っています。

 

※2020年7月23日時点の医師横山啓太郎個人の意見です