新型コロナウィルス感染症の数値の解釈について

新型コロナウィルス感染拡大下で、新規感染者数が毎日公表され世間の注目を集めています。

しかし、PCR検査数が多くなれば、それだけ新規感染者数が増えることから、どの値に最も注目すべきかということの議論が進んでいます。

現在、東京では約1日約4千件のPCR検査数。陽性率は6%で、1日の新規感染者数約2-300人、実効再生産数0.9です。一方、New Yorkでは1日約5-6万件のPCR検査数。陽性率は0.9%で、1日の新規感染者数約500人、実効再生産数1.0です。New York並みに検査数を10倍以上に引き上げた時にどの様に東京の数値が変化するか解りません。

 

それよりも重症化率や致死率の方が重要であるという議論もあります。昨日、産経新聞に「大阪のコロナ重症者、東京の3倍に 中高年層への感染拡大警戒」https://news.yahoo.co.jp/articles/1473a4d7bb9b35aae62b03e14ab397c0e1f0bf5bという記事がありました。テレビのコメンテーターは「大阪は高齢者に感染が拡大しているのではないか?東京もいずれは重症者が増える。」と発言していました。しかし、大阪の重症者が多いのは最近のことではなく、全国と比べて重症化の定義が異なることが予想されます。

厚労省の担当者によると、酸素吸入をしないと危ないと判断された感染者が「中等症」に該当します。さらに症状が重い「重症」は集中治療室(ICU)での治療を必要とする場合、もしくは人工呼吸器を装着する必要がある場合のことを指すそうです。https://news.yahoo.co.jp/articles/ed7c79007bf81fa5bd94c6e16a31b5ca055c7b4e

しかし、医療者から上がってくる報告は必ずしもこの定義通りに行われていないのではないでしょうか?

私は、酸素吸入をしないと危ないと判断された感染者を「中等症」として扱うことに違和感を持ちます。酸素吸入をしないと危ない患者さんの中には少なからず重症者がいるというのが医療者の感覚です。実際に軽症で待機中の患者さんが死亡されたケースがありますが、この患者さんは、人工呼吸器をつけていないので軽症者となるのでしょうか?

 

新型コロナウィルス感染症について様々な数値が紹介されていますが、定義がはっきりしなければ、それを元にしたコメンテーターの発言は不確かな印象を持ちます。やはりその中で専門家委員会の先生方が最も情報を持っているのではないでしょうか?専門家委員会の先生方に医療者が質問を投げかけていくような情報発信を求めます。

 

※2020年8月18日時点の医師横山啓太郎個人の意見です。