当たらないかもしれない今後の予想と私のリクエスト

新型コロナウィルスが今後どの様な感染状況になるかは誰も解らないと言われています。ワクチンや特効薬が開発されれば別ですが、この半年でどうなっていくかを予想してみます。私の専門は感染症ではありませんし、数理モデルも解りません。WHOや政府・専門家委員会が持っていて公表しないデーターも知らないので、一般的に公になっている情報から考えて、私の今後の予想とリクエストをお話します。

 

都知事が「夜の街の限定的問題である。」と説明した時に多くの人が「近々、高齢者に広がっていく。」と考えたでしょうし、Go toキャンペーン発出の時に多くの人が「きっと全国に感染が広がる。」と考えていたでしょう。このことが、現実化して「私が言った通りでしょ。」という感じでテレビに出ているコメンテーターもいますが、さすがに都知事も政府もそのことは解っていたと思います。

 

新型コロナウィルス感染症で最も問題であるのは感染して亡くなられる方の数の問題です。我が国では現在約1000人です。年間のインフルエンザの死亡者数は約3000人です。

これから新型コロナウィルスの感染者数が増えることが予想されますが、年間の新型コロナウィルスの感染者による死亡者数を数千人と設定して、その中で医療崩壊が起きず、経済が大きなダメージを受けないような政策を考えているように思います。都知事が感染者数より前に重症者数を発表するようにしているのはその表れだと思います。

 

「放って置くと、医療崩壊が起こり、NYのようになってしまう。」ということは、私は直ぐには起こらないと思います。流石に政府も「放って置く」ことはしませんし、このような発信により、国民は自粛します。現在、重症患者は増えていますが、そのスピードは4月のNYとは全く違っています。新型コロナウィルスは感染して、約1週間で発症、10-14日でPCR陽性と言われています。重症化には診断されてからさらに7-10日程度かかりますが、今から7-10日前の東京都の新規感染者数は既に200名を超えています。

重症患者の増加は確実ですが、そのペースはそれ程速くありません(ただ、そう書いているうちに本日の東京の新規感染者数は463人とジャンプアップしたので、400-500人程度の新規患者数で推移した場合ですが・・)。

 

その時間が用意されているので、その中で適切な方策をとっているかが最も重要です。これを間違えれば致命的になります。

 

重症患者の入る病院への入院患者数を減らし、退院患者数を増やすにはコロナ用の療養施設を充実させる方法があります。オリンピックで用意している宿泊施設などを利用して早急に療養施設数の増加を図る必要があります。

重症患者管理施設は現在基幹病院が担っています。大学病院では既存の診療もあり、これ以上コロナ用の病床数を大幅に増やすことは出来ません。この状況の中で期待したいのが自衛隊中央病院です。ピーク時に100床以上の患者さんを管理していたのが自衛隊中央病院です。自衛隊中央病院は大学病院でも30-40人レベルの受け入れに対し、極めて多数の患者さんを受け入れており、院内感染も起きていません。話はズレますが、新型コロナウィルス感染症は災害と呼べるもので、一般医療者は災害には慣れていません。自衛隊中央病院のような災害に強い医療スタッフがリーダーシップをとって、既存の病院あるいは新たな病院で重症患者の管理体制を作り上げて欲しいです。

米国で有名なCDC(アメリカ疾病予防管理センター)は軍隊の管轄下にあると聞いています。NYで新型コロナウィルス感染症に駆け付けた看護師の日当は、日本とは比べ物になりません。彼らは軍人としての報酬を受け取っているように思います。政府が資金的に後押しすることも重要です。

 

前述のように、「放って置くと、医療崩壊が起こり、NYのようになってしまうということは、直ぐに起こらない」と予想しましたが、その予想を覆すリスクが、海外渡航者の受け入れと冬のインフルエンザとの同時流行です。

我が国はPCR検査数が中々増えて行きませんが、その背景にはその検査数でも他国に比べて感染者数や死亡者数が少ない事があるかと思います。しかし、海外渡航者の受け入れと冬のインフルエンザとの同時流行のリスクを考えると検査体制の整備は必須です。

現時点でPCR(抗原)検査数を増やすことは、日本よりPCR検査数が多い国々で、日本より感染が蔓延していることを考えると感染制御に繋がっていないかもしれません(他国でも検査数未だ感染を制御するには足らない可能性があり、結果が出るのが遅いことも問題でしょう)。

それでも、他国でも類がない程の閾値を超えて検査数を増やし、迅速性を増すことが、感染を制御する可能性は否定できません。

※2020年7月31日時点の医師横山啓太郎個人の意見です