新型コロナウィルス感染拡大が止まりません。
私が所長を務める慈恵医大晴海トリトンリニックでも発熱で来られた患者さんのPCR陽性率が上がってきています。
政府は、中等症の患者さんを自宅で往診医が診るようにして、大学病院などのコロナ専用ベッドは重症の患者さんを対応するような方針を打ち出そうとしています。
中等症の患者さんがいつ重症化するかわからないのが、新型コロナウィルス感染症の特徴です。中等症と重症の判別をするのが困難です。
加えて、ベッド数が足りなくなっていることからの政策ですので、中等症の患者さんが悪化した時にスムーズに入院できないことは目に見えています。
開業医が、直ちにコロナ患者さんの往診医になったり、リモート診察する仕組みができていないので、実現不可能な政策方針です。
政府や都知事が何を言っても、この状態を招いた責任を負っているので炎上するばかりです。
ポジティブな話はワクチンぐらいしかないのですが、これも他国と比べると大きく遅れをとっています。
変異株のせいにして、責任を逃れるのも国民の心を打ちません。
しかし、一方で、これだけ増えてしまうと何ができるのか?というと答えを窮します。
保健所は陽性患者のことが追えなくなってきています。金曜日に陽性がわかって保健所に連絡した人でも、保健所から連絡が来るのは、次に週の月曜日だったりします。その間、患者さんもご家族の方もどうして良いかわからりません。食料の買い物には行くでしょう。その間に急変する患者さんもいるでしょう。
保健所は濃厚接触者の同定はできないので、「感染者の家族は濃厚接触者かな?」というレベルです。濃厚接触者を増やすとPCR検査が追いつかないので濃厚接触者の同定は最低限となり、濃厚に接触していて濃厚接触者と同定されていない人がウィルスを撒き散らします。
わかっていることは
- 東京都の新規感染者数は5000−10000人になり、医療崩壊は少なからず起こる。
- 東京都の新規感染者数が海外のように30000人以上と発表されることはない(そうなったとしても、それだけのPCR検査能力がないため)。
- 重症者を優先的に入院させるシステムと在宅医療によるバックアップは、既存の組織に掛け声をかけるだけでは難しい。
- ワクチンが感染者数を減少させると思われるが、年内は難しい。
- 飲食店などへの制裁は、国民感情を考えると選挙も控えていて難しい。
私は、やるべきことは
コロナ専用の病院や行政チームを作り、在宅との患者の入院調整や入院患者の在宅への退院調整を行うこと。
患者ができる抗原検査の感度を上げて、自宅や職場で簡便にコロナ検査を可能にすること。
と思います。
この2つが、今まで保健所がやってきて今崩壊している作業です。これは1年以上前からブログで発信してきた内容です(1年前に、東海大学医学部付属東京病院などを、コロナ専用病院にすることを都は発表していましたが、一向に進みませんでした。)。
どうか、この2つのことに注力してほしいです。
8月8日時点の医師横山啓太郎個人の意見です。