検査キットから冬の新型コロナウイルスとインフルエンザの診かたを考える

富士レビオ社が開発した新型コロナウイルスの抗原検査キットが承認されました。

咽頭拭い液の検査で約30分で結果が出ます。新型コロナウイルスの抗原量は発症9日目程度までは唾液中に多く存在しているので、近々唾液での検査が承認されることが期待できます。
島津製作所が開発したPCRも唾液で測定可能なので、今後は唾液検査が主体になるでしょう。
 
しかし、抗原検査キットと新型コロナウイルスPCR法との陽性一致率は前者が37%(10/27例)と低いことが解っています。
PCRが陽性と出た患者の37%でしか抗原検査キットでは陽性にならないことが明らかになっています。
一方、抗原検査キットが陽性であれば、殆どの場合PCRでも陽性で新型コロナウイルスに感染していると言うことが出来ます。
つまり、最初に抗原検査キットを行い、陽性であればPCR検査を行う必要が無くなるので、PCR検査の負担軽減につながることが期待されます。

検査キットからこの冬にインフルエンザと新型コロナ感染症の両方が流行した時のことを予想してみましょう。
発熱患者さんは、受付で新型コロナの抗原検査キット用とPCR検査用の唾液を入れる容器を受けとります。
他の患者さんの感染を避けるためにその後、外に行って唾液を容器に入れて発熱外来を受診します。
30分待つと抗原検査が出ます。
新型コロナの診断がでて、保健所に連絡して入院するほどの症状でなければ、自宅待機かホテルでの待機です。

抗原検査で陰性であれば、インフルエンザの可能性もありますが、コロナでないとは言えないのでPCR検査をします(PCR検査の結果は翌日です)。

インフルエンザの検査は現時点では唾液ではないので、検査を行いません。
抗インフルエンザ薬を処方し帰宅してもらいます(場合によっては冬までに唾液検査が認められるかもしれません)。

翌日にPCR検査が出て、陽性であれば、保健所に連絡して入院するほどの症状でなければ、自宅待機かホテルでの待機し、抗インフルエンザ薬を中止します。

陰性であれば、インフルエンザか普通の風邪の可能性が高いですが、自宅で経過観察してもらうことになります。
ただ、これは医療崩壊が起きず、入院ベッド、ホテルなどの受け入れ能力が十分ある場合です。
 

検査キットの登場は歓迎すべき話です、ただ、引き続き医療全体で新型コロナウイルスに取り組むことが重要です。

※2020年6月12日時点の医師横山啓太郎個人の意見です。