オリンピック・パラリンピック組織委員会から新型コロナウィルス感染症の講演を依頼されました。

6月末、オリンピック・パラリンピック組織委員会から新型コロナウィルス感染症に関する講演を依頼されました。
感染症の専門家ではないですが、私なりにどの様な筋立てが良いかを考えています。

新型コロナウィルス感染症の感染形式には、飛沫感染接触感染があり、結核や麻疹のような空気感染はとされています。
また、症状のない不顕性感染の患者さんの数が多いことも知られています。

その中で、以下のことが明らかになっています。
 
(明らかになったこと)
• ウィルスを感染させるのは5人のうち1人だけ
クラスターとしてジム、卓球場、ライブハウスが報告された。
• 実際にウィルス量は発症の2日前から発症時期が多いとされている。
• 当然、不特定多数の人と会う、飛沫を浴び密集、密接はリスクが高い。所謂3密。
• 院内感染は、高齢者の重症者から感染が起こっている。
• 一方、満員電車(パチンコ店)でのクラスター発生は報告されていない。
• 満員電車(パチンコ店)では、殆どの人がマスクをして話すことは少ない。
 
ウィルスを感染させるのは5人のうち1人だけなのに、患者数が増えていくのは、一定の条件のもと1人で多数の人に感染させる現象が起こっているからです。

クラスターとしてジム、卓球場、ライブハウスが報告されたということは、元気な人がウィルスを伝播させる可能性が高いということを表していて、このことは不顕性感染の存在を強く疑わせました。
実際にウィルス量は発症の2日前から発症時期が多いということも解ってきました。

人に感染させるリスクは上気道のウィルス量×症状×マスク×行動×時間
人から感染するリスクは罹りやすさ×人との距離×人との会話×密閉環境×時間
ということが解りました。
 
そうであれば3密が悪いことになります。
しかし、ウィルス量は発症の2日前から発症時期が多くても、院内感染は、高齢者の重症者から感染が起こっています。
このことがエアロゾル感染の可能性を強く疑わせます。

3密の中で避けられない条件も多く、その中でどの様な条件が最もリスクが高いかを明らかにする必要があります。私は3密の中で密閉が最もリスクが高い条件と思っています。

また、満員電車(パチンコ店)でのクラスター発生は報告されていません。
満員電車(パチンコ店)では、殆どの人がマスクをして話すことは少ないことが、重要なポイントではないでしょうか?
電車内のアナウンスやエレベーター内のステッカで会話を慎むことを推奨してもらいたいと思います。

 
以上のような知見を踏まえ、
オリンピック・パラリンピック組織委員会の方にはイベント開催時の注意点を説明したいと思います。

(イベント開催に向けた注意点)
・イベントの開催時はなるべく少人数、換気、会話しない
・会議の形態はWeb会議とリアル会議を組み合わせる
・受付時に検温の実施、ビニールシートを敷く
・参加者にはマスク、アルコールの義務化
・席の配置は各自を離れて座らせる
・実施する場所は換気がしっかりできる部屋での実施か、外での実施
・アンケートは後日Webで
 
このようにwithコロナを意識したイベント開催をすべきですが、私の努める慈恵医大晴海トリトンクリニックでも、就業時間の前倒し、発熱外来のゾーニング、昼食時を2つのグループに分け、食事以外の時のマスクの着用を徹底しています。
その様にすれば、職員に1人の感染者が出た時に他の職員は濃厚接触者にならず、クリニックを継続することが出来ます。※しかし、感染者が2名出た時は、クリニックを閉鎖することを予定しています。
 
様々な領域でwithコロナ時代での工夫を考えていく必要がありそうです。
 
※2020613日時点の医師横山啓太郎個人の意見です。