行動変容外来とコロナ禍

「人が不幸を感じるのは習慣が崩れた時である。」という考え方があります。失業や家族や友人の死、大病などがそれにあたります。

 

新型コロナウィルス感染症は私たちの習慣を奪いました。毎日の通勤、同僚との会話や会食など当たり前と思っていたことが出来なくなりました。映画館やレストランなど人が集まる所が、娯楽の中心でしたから、自粛をしていることは人生の楽しみを奪ってしまうような印象を持っている方もいらっしゃるでしょう。

 

このような感覚は、初めて糖尿病の診断を受けた方と似ているような気がします。糖尿病と診断を受けると「もう美味しいものを食べられない。」と感じて気持ちがふさいでしまう方がいらっしゃいます。自分の人生で糖尿病と付き合っていくのが嫌で糖尿病と診断されても医療機関に受診されない方もいらっしゃるのです。40代の男性で健診において糖尿病と指摘されて医療機関を受診する割合は約50%です。

 

私たち医療者はその様な感覚でいらした患者さんをどの様に拝見したら良いのでしょうか?従来は糖尿病のリスクを説明して自己管理をしてもらうという診療が主体でしたが、このような方法は有効でないことが分ってきました。リスクを知るだけでは自分を管理し続けることが出来ないのです

私が行っている行動変容外来でご紹介している考え方の1つにSeligmanのPERMAモデルがあります。

P:Positive emotion ポジティブな感情、E: Engagement 没頭すること、 R:Relationship 人と関わること、M:Meaning 意味があること、A:Accomplishment 達成することの頭文字をとっています。

糖尿病患者さんが前を向いて生きることが生活習慣の改善につながります。

 

With Coronaで新型コロナウィルス感染症と共存する世界でも同様のことが言えます。

リスクだけに目を向けても窮屈な自粛生活が続けられるわけではないのです。この変化に順応して新たな目的を見出さなくてはならないのです。

 

皆さんは、今の生活でPERMAを満たす事柄を見出してらっしゃいますか?

私は、行動変容外来をリモートで行う計画を練ることに没頭しています。

 

 

※2020年9月2日時点の医師横山啓太郎個人の意見です。