「かかりつけ医」という言葉の定義が難しいという問題点

昨日「新型コロナウィルス感染症によって医療がどの様に変わるか?」について毎日新聞の取材を受けました。私が行っている「行動変容外来」などが新規的診療法として定着するか?についてコメントを求められました。しかし、その解答は私には解りません。

いつの間にか「政府が10月17日以降は新型コロナの受診や相談の窓口は保健所からかかりつけ医になる」ということについて熱弁をふるっていました(ですから、記事になるかは解りません)。

皆さんに「かかりつけ医」はいらっしゃいますか?

私は東京の大学病院(慈恵医大)と大学病院付属のクリニックで外来を行っています。

新型コロナウィルス感染症が爆発的に感染した場合、医療機関は無制限に患者さんを受け入れることが出来ません。その時に「かかりつけ」かどうかが受診できるかどうかの線引きになることが予想されます。実際に3月から4月の第1波でICUが一杯だった時には、慈恵医大でも、そのような体制をとっていました。

大学病院であれば、半年から1年間受診歴があることが「かかりつけ」と定義できるかもしれません。東京のクリニックだとどうでしょう。高血圧や糖尿病で通院されている方は「かかりつけ」と判断されます。

一方、6年間で3回風邪をひいた時には必ず、Aクリニックに通院しているという患者さんはAクリニックの「かかりつけ」になるでしょうか?

患者さんからみたら、受診するのはAクリニックに決めているのでかかりつけでしょうが、Aクリニックから見れば、1-2年以上受診されていない患者さんを「かかりつけの患者さん」と判断するかは微妙であると思います。

地方であれば、家族ぐるみで1つのクリニックに受診しているということは珍しくなく、おじいちゃんが「かかりつけ」であれば、お孫さんの受診歴がなくても、お孫さんも「かかりつけ」であることもあるかもしれませんが、都心の大学病院やクリニックであれば、ご本人以外は「かかりつけ」にならないと思います。

 

今回の「10月17日以降は新型コロナの受診や相談の窓口は保健所からかかりつけ医になる」という発表の根拠は、「冬になるとインフルエンザが流行するので、保健所の手が回らなくなる」と説明されています。「保健所の手が回らない時に、かかりつけ医が対応できる」保障があるのでしょうか?

情報発信には言葉の正確さが求められます。「かかりつけ医」について明確な説明がないと、国民が混乱することになるのではないかと心配です。

※2020年9月30日時点の医師横山啓太郎個人の意見です。