オンライン診療の問題点

新型コロナウィルス感染症拡大に伴い、オンライン診療の一部が認められるようになってきています。
これを機会にオンライン診療が定着するかという議論が多方面で行われていますが、普及には幾つかの問題点があると考えています。
 
先ず、診療上の問題です。
急性病変であれば、適切な診察が出来ない点が課題になります。
例えば、風邪や肺炎などは、胸部聴診をしなければなりません。
今回の新型コロナウィルス感染症でも「風邪かも知れないけれど、クリニックに行って診てもらいたい」意見に対して、患者がクリニックに集まることでクラスターを作ってしまう危険性があることが問題になりました。
一方、生活習慣病の場合、病態が変わらなければ処方が変わることがないので、今回のコロナウイルス感染症の拡大の中許可されました。
ただ、生活習慣病でも胸痛など変化が出た場合に診察が必要となるので、その時は来て頂かないと適切な診療が出来ません。
これを解決するために、オンラインでも適切な診療ができるように、バックアップする施設があれば良いのですが、その場合にも施設の設立及び、施設との緊密な連携が必要となります。

また、効率的なオンライン診療には他国が実施するような、電子カルテの推進と情報の共有化、そしてその情報をマイナンバーカードに紐付けをするチャレンジをしないといけません。
そして、オンライン診療の定着には、診療報酬を改訂することが重要ではないかと考えています。

従来、慢性疾患指導管理料が診療報酬に算定できない状況でしたが、4月10日より算定できるようになりました。しかし、受診をしない患者さんは薬だけであればと従来1カ月に1度の診察を受けている人でも2カ月あるいは3カ月に1度の診察を好む方が増えていくかと思います。オンライン診療によって現状の医療形態を程度維持しながら、患者さんの利便性が向上することが求められています。
国がこの領域に関してイニシアティブを持ってオンライン診療が推進されるように軸足を移す必要があると考えています。
というのも、国の支援なく、クリニック側が独自にオンライン診療に踏み出すのは経済的に難しい状況があるからです。
新型コロナウィルス感染症で劇的に収入が減少する業種としてクリニックがあり、クリニックの経営は難しくなっていきます。
新型コロナウィルス感染症への感染を恐れ、来院する患者数は激減し、風邪だと思われる患者さんにも新型コロナ感染症を疑い長時間の診察が必要になり、負担は大きくなっています。
さらに、感染防護服などのコストは持ち出しになり、1人でも職員に感染者が出れば閉鎖されるというリスクも抱えています。
 
オンライン診療は今後、必ず浸透していくと思われますが、上記の問題を解決し、さらに医療にとって重要な敷居が低く、平等な日本の医療制度を維持するために、国の積極的な支援が必要だと考えています。

※2020年4月13日時点の医師横山啓太郎個人の意見です。