昨日、安倍総理が全世帯に2枚ずつマスクを配布することが発表されました。
これに対して「全国民にマスクを配るならば、医療施設に配るべき。」とツイートした有名人がいます。
このやり取りを聞いて「いつの間に新型コロナウィルス感染防止にはマスクが必要になったのだろう?」と思っているのは私だけでしょうか。
今年の2月の報道では、「新型コロナウィルス感染は飛沫感染と接触感染で、空気感染ではないのでマスクは必要ない。」ということになっていたと思います。
その根拠として、フランスから発表された論文が引用されましたが、この論文ではインフルエンザ発症者においてマスク着用による感染予防効果は認められませんでした(Canini L. PLoS ONE 2010)。
しかし、それを支持していたコメンテーターもマスクを着用するようになり、著しいマスク不足になりました。
フランスでは政府のマスク不要論に対して警察官や郵便局員が反旗を振り上げました。
それでも現在もWHOは着用することでの本人に対する感染防御効果を疑問視しています。
一方、マスクを着用する理由を後押しするのがよく耳にするエアロゾル感染ではないかと思います。
粒子径が5-10ミクロン未満のエアロゾルは、水分が蒸発して軽いので、より長い時間空気中に漂い肺のなかを通る気管支の末端にある肺胞まで到達することができます。このような形態で感染していくのがエアロゾル感染です(Sci Rep. Asadi S. 2020)。
改めて、コロナウイルス感染症に対してマスクは本当に有効かを考えたいと思います。
マスクが重要なのは、マスクを着用することによって、汚染された手が口元に行かないための接触感染防止に有効と考えられています。
また、飛沫感染はくしゃみなどで飛ぶ唾液のイメージを持つ人が多いと思います。
くしゃみや咳をしたときに口から出てきたばかりの飛沫は、水分量が多く、1~2m先の地面に落下するのですが、そのサイズの物体にはマスクは有効と言えます。
ただし、マスクの鼻の部分と脇の部分が皮膚から離れている人は無防備に近く、マスクが有効であるかは個人差があると言えます。
次に、マスクの穴の大きさやウイルスのサイズからエアロゾル感染について考察をしたいと思います。
マスクの穴の大きさをネットで調べてみると5~10ミクロンとされているようです。
折り重ねるとその10分の1程度になるかもしれませんが、それでも0.1ミクロンのウィルスの流入は食い止められないと思われます。
クラスターを生じている密閉した空間を考えると、このエアロゾル感染のリスクを防げない可能性が高いため、マスクをしていてもその様な場所に行くことを避けるべきでしょう。
マスクの有用性を吟味することはマスクの再生やマスクを手作りする時の役に立ちます。
勿論新品使い捨てが良いのでしょうが、医療の現場でもN95というエアロゾル感染を防止するマスクは不足して使い捨てに出来ていないのが実態です。
今後世の中でマスクの理解が深まり、結果として、コロナウイルス感染拡大が少しでも抑えられることを期待しています。
※2020年4月2日時点の医師横山啓太郎個人の意見です。