桜を見せて見送りたい

私は大学病院で医師をしていますが、癌、循環器疾患、脳卒中感染症の患者さんは、冬に具合の悪くなることが多く、私が研修医の頃から「〇〇さんには、最期に桜を見せてあげたい。」と思い治療にあたりました。それは40年近く前の話ですが、今でも「桜を見せてあげたい。」と思い、働いている医療スタッフが多いかと思います。

私の父は大腸がんを患い自宅で亡くなりましたが、桜のシーズンには何度も花見に行きました。私だけでなく、姉の家族も桜を見に連れて行ったので、最期の春は4−5回花見をすることになったと思います。父が桜を見て笑顔になっていたことを思い出します。

しかし、今になって思うと「父は家族にために笑顔になっていたのではないか?」とも感じます。

多くの患者さんが最期の時を迎える前の花見の時には、花見が自分のためだけでなく、家族に思い出を与える儀式であることを知っている気がするのです。

今年の桜も散りましたが、そんな家族がたくさんいると思います。

 

2023年4月4日時点の医師横山啓太郎個人の意見です。