解剖実習

医学部では、臨床実習を行う前に献体頂いたご遺体の解剖実習を行なっています。ホルマリンで保存されたご遺体は血管の状態も随分変化していますが、医学生が人の体に初めてメスを入れる実習となります。医学生は不慣れなため途方に暮れて、ホルマリン臭に苦しみながら実習を進めていきます。ご献体頂いたことを考えると不謹慎かもしれませんが、医学生にとっては苦行です。医師になるための関所と言っても良いかもしれません。

今では考えられませんが、私たちが医学生の時は解剖実習で手袋をはめることすら許されませんでした。医学生の感染のリスクを考えるとあり得ない指導方法ですが、自己犠牲の精神を叩き込まれました。

しかし、現在は動画の3Dテキストがあり、実際の手術動画などを観た方が、臨床の現場では役に立つこともあるでしょう。メスを入れる感覚も3Dプリンターで養うことができるかと思います。

医学が進歩するたびに医学生の記憶する分量は増えているので、効率的な解剖実習として新しい医学を学ぶ時間を増やしていく必要があるかもしれません。

このような考え方を持っている医療者は多いかと思いますが、解剖実習という慣習を崩すことはタブー視されている気もします。

医学の中の、死者と向き合う神聖な部分に関しては理屈で変えていくのに時間がかかりそうです。

 

 

2022年9月27日時点の医師横山啓太郎個人の意見です。