自分にとっての「ちょうどよい」を見つけるために、たった2つのことを意識して下さい。

健康マネジメントでネックとなるのは、“習慣化”です。行動が変われば習慣が変わる。 習慣が変われば人格が変わる。 人格が変われば運命が変わる。

と言われていますが、習慣を変えることは並大抵のことではありません。「人間の脳は習慣を変えないように」設定されているのです。「わかっちゃいるけどやめられないという悪しき習慣」がたくさんあるのです。

 

 そのために大事なのは、いきなり何かの「健康法」に飛びつくのではなく、まずは自分の体や健康状態に目を向ける意義を感じることです。これは人生100年時代に益々重要になっています。自分の健康に対するあり方を決めたら、習慣化するメソッドをご自分自身で考えていくことが大切です。

私が、行動変容外来で提案する【健康的な行動の習慣化 20のメソッド】をご紹介します。

 

  1. 1つから始める。→欲張らずに1つから始めてハードルを下げましょう。
  2. 初期目標は低くし、段階的に上げていく。→成功体験を積みましょう。
  3. 実際にやってみる。→まずやってみて成功体験を経験しましょう。
  4. 既存の習慣と結びつける。→日々のスケジュールに組み込みましょう。
  5. 時間を決める。→朝型か夜型かを知ることも大切です。
  6. 協力者をピックアップする。→諦めそうになった時も応援してくれます。
  7. やる気がなくてもその場に行ってみる。→とにかくハードルを低く。
  8. 逃げられない状況を作る。→環境作りも大切です。
  9. 簡単な記録を取る。→記録によって達成感ができます。
  10. 習慣が途切れそうなときの対処法を決める。→前もって次善の準備をしておきましょう。
  11. 1週間以上続かないときは別のやり方に移る。→自分に向かないことは続きません。
  12. できなかったことを意志のせいにしない。→自分を責めると負の負債を持つことになります。
  13. 方法に名前をつける。→俯瞰(ふかん)して習慣化しましょう。
  14. 妨げになる行為に名前をつける。→妨げになる行為に名前をつけ、やりすごしましょう。
  15. 自分にごほうびをあげる。→時には自分に甘くしてください。
  16. 進歩している自分を楽しむ。→自己肯定感を持ちましょう。
  17. ほめる。→自己肯定感を育てましょう。
  18. 3分やりすごす。→3分たてば、誘惑から逃れられます。
  19. 瞑想する。→深呼吸しましょう。
  20. 歩くときは視線を上げる→ポジティブな意識が習慣を変えるのに必要です。

 

しかし、この20のメソッドを私から患者さんにご紹介すると、患者さんの行動変容が起こると思いますか?

 

ダイエット本が山ほどあるように生活習慣を変える「やり方」は無数にあります。しかし、ダイエットが続かないように「やり方」だけ求めても習慣を変えることはできません。行動変容外来は、看護師が患者さんと個別のやり方を相談して対策を立てていくのですが、20のメソッドというよりは「あり方」に目を向けています。

習慣を変えるためには、たった2つのことを意識してください。

  1. 自己肯定感を高める。
  2. それを日常化できる条件を探す。

この2点です。ご紹介した20のメソッドの1から8はハードルを下げたり、環境を整えることにより、成功体験を重ねることを目指したものです。

そして9から20は、成功体験を実感しやすいようにする方法です。

大切なのは、ご自分で考えてください。

ご自分の中で「健康に目を向けるよいう意識」を育てる必要があります。それは、子育てと同じ感覚です。

お子さんが、運動会やテストでうまくいかなかった時に、「大丈夫、今度は作戦変えてみよう」とアドバイスしたことはありませんか?

皆さんの中には20個どころではなくたくさんの素晴らしいやり方が眠っているはずです。

 

 

2023年9月14日時点の医師横山啓太郎個人の意見です。

動機的面接法

生活習慣病の患者さんの多くは「わかっちゃいるけど止められない。」ということで習慣を変えようとはしません。患者さんに習慣を変えてもらうには医療者としてのスキルが必要です。これは子供の教育や職場での後輩への指導についても同じことが言えるかと思います。

例えば、間食をやめられない人がいるとします。その人に「間食をやめましょう。」と言ってもほとんどの場合、有効ではありません。

誰に対しても有効な質問はないですが、医療面接の手法として幾つかの例が挙げられています。

  • 間食をやめられる自信は10段階中で幾つですか?(例えば3と患者さんが、答えた時に、何故1ではないのですか?と質問を加えて、会話を続ける)
  • 間食がやめられる日とやめられない日では、何が違うと思いますか?(食べるということに意味を喚起する)
  • 食べ過ぎて150kgになってしまう人をどう思いますか?(極端な例と比較する)
  • 元々、健康のために我慢をすることをどのように捉えていましたか?(元々の自分を知る)
  • このまま間食を続けていたらどうなりますか?(未来から今を見る)

私たちは、医療情報を伝えるのではなく、ご本人の考え方を整理することに注力します。

1、尺度法、2.喚起的質問3.極端な質問 4.過去を振り返る質問 5.未来を展望する質問の5つのパターンがあります。

前提を疑い、尺度により自分の状況を知り、そのことを未来と過去の時間軸と他人と比較する空間軸で整理することを手助けします。これは、私が行動変容外来で行っていることですが、お子さんの教育法、自分の中の健康意識の育て方にも繋がると思っています。

 

2023年9月2日時点の医師横山啓太郎個人の意見です。

行動変容を促すキーワード

「人間と動物の違いは何か?」という命題について、様々な回答があるかと思いますが、最適解と考えられているのが、「人は選択する。」ということです。

それでは、どの様な基準で選択するかといえば、①善悪、②損得、③好きか嫌いかの3種類と言われています。この中で、一番強く心を動かすのが、「好きか嫌いか」ということだとも言われています。

人は、「好きか嫌いか」を自由に選択できることが幸福と考えることができるとも言われています。

しかし、善悪や損得と比べて「好きか嫌いか」はとても複雑な基準であることもわかっています。「今の仕事は嫌いだ。」と言っている人も、「そもそもその仕事が好きだからやめられない。」ことも多いからです。

そもそも、人は自分の考え(主観)のもとに行動するのですが、その考え(主観)は善悪や損得など客観的要因に影響を受けます。

 

主観は「やり方」よりも「あり方」に起因するものです。

人に行動変容を促す時には、「客観・やり方」よりも「主観・あり方」にアプローチした方が良いことがあります。現在は情報に溢れていて「やり方」については接する機会が多いからです。

「あり方」を知るために「How」でなく「Why」を考える必要があります。子供の頃からの本質的な自分、他者と比較した自分など時間軸と空間軸を変えた視座を持つことも有効です。

 

2023年8月8日時点の医師横山啓太郎個人の意見です。

どのような老い方が良いかを考えてしまいます。

今週の日曜日に義母が転倒して右の大腿骨を骨折しました。義母は今年の5月12日に脳梗塞になりリハビリ病院を退院したばかりでした。月曜日に手術をしてもらい今は病状は安定していますが、家に帰りたいと24時間ひっきりなしに私の妻に電話をしてきます。脳梗塞で入院した時も同様で、監禁されているというような気持ちになり、毎日泣いています。私の母も2020年に大腿骨を骨折した時に、リハビリ病院に馴染めず、自主退院をしています。母も義母もそれまでは、子供と同居していて、孫たちと毎日話をして、誰からも「幸せですね。」と羨ましがられていました。ところが、入院生活とそれまでの生活のギャップに苦しみ入院生活に耐えられないようです。そんなことを経験し、同世代の友人に親御さんの介護の話を聞くと「老人ホームで楽しそうですよ。」という返事が返ってくることも珍しくありません。老人ホームに入る前は独居であり、集団生活が楽しいそうだということです。

入院前や老人ホーム入所前の生活が、幸せであれば幸せなほど苦しんでいる母や義母を見ると、どのような老い方が良いかを考えてしまいます。

 

2023年7月27日時点の医師横山啓太郎個人の意見です。

新しい人間ドックの開発

医学が進歩して高齢化が急速に進んでいます。しかし、健康診断や人間ドックは大きく変わっていません。

人生100年時代なのにそれに適した人間ドックがないことに多くの人は気がついています。遺伝子検査、新規生活習慣病関連分子の測定、人工知能による解析など人間ドックの差別化が求められています。

私は新しい人間ドックの開発を目指しているいくつかの会社の相談にのっています。

相談に乗ってみて感じることは、「開発者が受診者のニーズを本当にわかっているのか?」ということです。遺伝子検査で癌になるリスクがわかっても、100歳を大きく超えた時に、癌が発症するリスクとすれば、知る必要がないのかもしれません。

そもそも、皆さんは何歳まで生きたいかを知りたいのでしょうか?

多くの人は、「80歳でもゴルフやサーフィンをやりたい。」ということが目指すべき目標と考えているかと思います。現在の人間ドックはそのような目標に答える項目になっているのでしょうか?

食事の指導でも「制限食で生活習慣病にならないこと」も大切ですが、「しっかりした筋肉を維持するためには何を食べたら良いか?」に興味を持たれている方が多いのではないでしょうか?「幾つになっても、格好良く生きたい。」というのが、私が開発しようと思う人間ドックのコンセプトです。

 

2023年7月12日時点の医師横山啓太郎個人の意見です。

言葉より姿勢

私は、医療コミュニケーションやWellbeingについての勉強会を1−2ヶ月に1度の割合で開催しています。

社会人と医学生が、持ち寄ったテーマについて意見を交わすリモート談話会です。

先日の会では、虐待やネグレクトを受けた子どもたちの相談を受けるボランティアをしている医学生が担当でした。彼は、「虐待を受けて死にたいという子ども」の相談を受けていました。時には数時間もかけて相談を受けていたそうです。1週間のコンサルとの後に、その子供は「死ぬことをやめた」とのことです。

彼は、「皆さんの人生を変えるような言葉を教えてください。」とリモート談話会の参加者に問いました。

人が悩みを持った時には、その視点を変えさせるような仮定法でアプローチしたり、や未来を想起するような提案を行なったりするスキルがあります。

しかし、今回の場合、彼が相談を受けた子供と一緒に暗闇に落ちていったという姿勢によるものかと思います。医学生の彼は、虐待された経験はありません。

言葉の力というよりも相手と同一化することが大切です。そのためには、時間が必要で技術による効率的な対応では、子供の意識を変えることはできなかったと思います。

 

2023年6月28日時点の医師横山啓太郎個人の意見です。

選択

人と動物の違いは「選択するかしないかということである」という定義があります。動物は殴られれば、逃げるに決まっていますが、人は殴られても逃げるか留まるかの選択をします。「私のために殴ってくれるのかも?」という意識がDVから逃れられない理由の1つになることもあります。

そこで、選択を掘り下げるとAかBの選択だけではなく、0か1かの選択があることに気が付きます。AかBの選択は「善か悪か」「得か損か」「好きか嫌いか」の3つの基準で行われていると言われています。これに対して0か1かの選択(やるかやらないか)は、0を選べば、何も生まれないかも知れません。1を選ぶと失敗するかも知れませんが、その失敗は、次の成功のために貴方に準備されているものかも知れません。

しかし、実際、行動を起こすことは怖いです。そんな時のキーワードは「決め」です。迷えば怖くなるだけなので、「1に決める」ということです。そのことを、覚悟、あるいは宿命と呼ぶのかも知れません。

 

2023年6月22日時点の医師横山啓太郎個人の意見です。