桜プロジェクト

今、東京の桜は満開です。

私たち医療者は「末期の患者さんに桜を見せたいという気持ち」が強いです。患者さんは冬に症状が悪化することが多く、「春は越せないかもしれない。」ということが多くあります。

私たち医療者もご家族の方も「桜を見せてあげたい。」という共通の気持ちで入院患者さんの外泊調整など行っています。

「末期の患者さんに桜を見せるプロジェクト」は其々の患者さん毎に様々なハードルがありますが、御家族も頑張ってそのプロジェクトに全力を傾けます。

 

そして桜の季節が過ぎ患者さんが亡くなった時に「お父さんは桜を見て嬉しそうに笑っていたね。」と生前の患者さんを懐かしがります。

 

私の父もそうでした。大腸がんの肝臓転移で、春を越せるか解らなかったのですが、亡くなる年は家族で多磨霊園の桜を見に行きました。そして6月に亡くなりました。今でも母は、「お父さんは桜が好きだったからね。」と言っています。

 

しかし、思い返してみると父はそれ程桜が好きだったという記憶がありません。父は、「自分のために家族が一生懸命になっている桜プロジェクトに乗っかること」を選んでいた気がします。

桜プロジェクトは患者さんのためだけでなく、患者さんを取り巻くご家族のためにあるような気がします。

そして、末期がんの患者さんだけでなく、親しい人への桜プロジェクトは自分自身に喜びを与えてくれるのだと思っています。

 

※2021年3月24日時点の医師横山啓太郎個人の意見です。