血圧と「医療の物差し」の続き

私は、血圧が今も医療の物差しであることに疑問を持っています。

自動車のエンジニアが車を動かして性能を見るのと異なり、人は、早朝・空腹時という24時間で5分程度しかないタイミングで安静という条件で、しかも100年以上前と同じ機器で血圧を測定しています。

医療を科学と呼ぶにはあまりにお粗末な臨床の実情です。

 

そして、私は血圧が生体を評価するのに正確かどうか分からないというだけでなく、血圧が高い人が生活習慣を改善しても殆ど血圧が下がらないことを問題視しています。

 

多くの研究で、生活習慣を改善することは生命予後や心血管合併症に寄与することが解っていますが、運動や過食を控えても血圧はせいぜい数mmHgしか下がらないことが多いのです。この程度の変化は、測定する部屋の室温など様々な因子の影響を受けます。そのため血圧を下げるために生活習慣を改善しようというモチベーションに結びつきません。

血圧を下げるのには降圧剤が最も有効です。

血圧を物差しとしている医療者も生活習慣を改善より、薬物療法に軸足を置いた方が効率的であると考えてしまうのです。

 

IoTが進んで、生体の測定方法が進歩することを私は望んでいます。

 

※2021年1月27日時点の医師横山啓太郎個人の意見です。