感染者数の増加とPCR検査数の増加をどう捉えるか

東京都で新型コロナ感染症患者数が急速に増加しているというニュースを見た医療関係者ではない私の知り合いから、現状の公表されている数値をどう捉えているのかと質問を受けました。
同様の興味を持たれる方々も多くいると思いますので、その知り合いに回答した内容を紹介します。

「今まで日本のPCR検査数は少なかったので、現在PCR検査数を増やしているから陽性患数も増えているのではないか」という意見もありますが、それは今までの日本の置かれている状況を踏まえると適切な考え方ではありません。

まず、我が国の検査陽性率が極めて高いことを考える必要があります。
韓国はPCR検査の効率を高めて、3月下旬までに合計で30万人に対する検査を実施したと発表していますが、この時の韓国の感染者数は約1万人でした。
これらの数値は累計の数なので、単純に30分の1の陽性率とはなりませんが、日本の陽性率とは状況が大きく異なります。

東京都における4月8日の新規感染者数は181人で、PCR実施人数が366人となり、陽性率は約50%なので、韓国の陽性率とは比べ物にならないぐらい高い割合になっています。
このような韓国と日本の陽性率の違いは日本では未だに症状があり新型コロナウイルスを疑う人を中心に検査がされているからで、現在、我が国で陽性患者が増えている状況は、症状があって疑い患者数が増えていることを示しています。
つまり、日本で新型コロナ感染症患者数が急速に増加している恐れがあると考えるのが適切な捉え方だと考えています。

現状の日本が取っているアプローチを変更し、韓国のように積極的にPCR検査を行えば、無症候性感染者が増えることが予想されます。
韓国でさえ実際に何名が感染しているかは不明で、正確性があるとは言えない状況ではあるものの、日本と韓国の医療レベルが同等と仮定した場合、死者数から考えると、今のところ日本の感染者数は国際的には少ない状況であると考えられます。

一方、現在の新規感染者数は韓国が日本を大きく下回っていますが、韓国の感染対策の成功は軽症者を早期に隔離するシステムの構築によるところが大きいです。
日本も初期のクラスター対策が限界を迎えつつある今、医療崩壊を避けるために、PCR検査数を増やし、軽症者を隔離するシステムの構築を早期に行うことが重要だと考えます。

※2020年4月10日時点の医師横山啓太郎個人の意見です。