自宅付近の火事を動画で見る感覚

本日、私の家の近くで火事がありました。

私の家は、比較的古い木造家屋の密集地とマンションが混在する地域にあります。木造家屋の1つが出火元で、道が狭く近くまで消防車が入っていくことができません。そのため、比較的広い道路に消防車が停まって、ホースを延長させて消火に努めていました。消防車の数は20台を超え、交通は遮断されました。

離れた場所から、スマホからネットで検索すると煙が立ち込めていてサイレンが鳴り響いていました。家には寝たきりの母とお手伝いさんがいます。

家に電話してみると

「私の家と火元とは数十メートル離れていて、火が飛び移る危険性はなさそうでしたが、黒煙が立ち込めている」とのことでした。

その後、数時間で消火が行われたとことです。

しかし、離れた場所で自宅付近の火事の様子を見ることに不思議な感覚になりました。まるでゲームで戦地を見ている感覚でした。

今は動画が人の感覚に影響を与えていますが、今後AIが人の感覚に影響を与えることも想定しする必要がありそうです。その感覚はどこからきているのかを意識する時代が来ています。

2023年12月20 日時点の医師横山啓太郎個人の意見です。

ジェンダー問題の多様性と医師としてのジレンマ

私は、慈恵医大晴海トリトンクリニックで所長を務める65歳の医師です。先日、50歳の貧血のために受診された女性の患者さんのことをお話しします。

 

前日、他院で健康診断を受けて、赤血球が正常の半分しかないので、すぐに医療機関に受診するように指示されて、当院を受診されたとのことです。

検査結果からは、ヘモグロビン(血色素)が7.4g/dlで、血球が正常の半分程度でした。赤血球のサイズが小さく、出血が原因の貧血であることは容易に診断できました。50歳・女性の貧血の原因の多くは月経過多です。この方には子宮筋腫があり、子宮筋腫→月経過多→貧血である可能性が高いと思われます。しかしながら、出血が原因の貧血としては、胃潰瘍・胃癌や大腸癌も鑑別診断に上がります。ご本人によると生理も便も異常がないとのことでした。しかし、消化管出血はリスクが高いので便に血が混じっているかを診断する必要があります。

20年前ならば、診察室で直腸診を行うのが、奨められていたと思います。直腸診は医師がゴム手袋をはめて肛門から人差し指を挿入し、直腸の壁の様子や便に血が混じっていないかを調べる検査です。

しかし、現在はそのような検査を行うかは患者さんに説明する必要がありますし、説明する場合も看護師が同席しないと患者さんに不快な思いをさせてしまうと思われます。

患者さんに説明すると、「直腸診はやらなくて結構です。」とのことでした。

症状がなかったので、便をご自分てとっていただき、週明けの月曜日に結果を確認することになりました。

すると、便の検査で潜血反応が強陽性でした。幸い貧血は進行しませんでしたが、消化管の検査の予約を進めました。

しかし、同様の患者さんが来院してもご本人が希望しなければ、私は今後も直腸診は行わないと思います。

医師は医療の水準を維持する立場ですが、ジェンダー問題の多様性に医師としてのジレンマを感じることがあります。

 

2023年12月12日時点の医師横山啓太郎個人の意見です。

医者のスキルのピーク

私は、慈恵医大晴海トリトンクリニックの所長をしていますが、今月65歳になりました。そろそろ定年で次の仕事のやり方を考えなくては行けません。大学にいると急がなくては行けない患者さんの対応は若い先生に手伝ってもらえますので、年齢によって衰えを感じることは少ないと思います。経験により知り合いも多いですし、敬意を持って扱ってもらえるので、あまり不自由を感じません。しかし、そのような体制がないとすると医師としてのパフォーマンスは大きく落ちると思われます。

不慣れなことに挑戦する気持ちは年齢とともに落ちています。経験を積む分、ネットから情報を得るスピードは落ちてきていることも自覚します。

医者のスキルのピークは何歳でしょうか?

ネットから情報を得るスピードだけであれば、医学部卒後まもなくの20代の医師が最も速いと思われます。ある程度の経験を積む必要がありますから40歳ぐらいが、医者のスキルが最も高いのでしょうか?

良い病院の情報量や人のネットワークの広さからは50歳前後かもしれません。

60歳を越えてもそのスキルを持ち続けるためには、不慣れなことに挑戦する気持ちを維持する必要があります。

そのための素養として知力、体力、ポジティブシンキング、人脈など、一般の人が認知症になりにくい要素が並んでいます。

 

2023年11月28日時点の医師横山啓太郎個人の意見です。

予想のできない社会

新型コロナウィルス感染症の7回目のワクチンとインフルエンザのワクチンを私のクリニックでも多くの来院者の方に接種しています。一方、発熱外来受診の患者さんは減っています。

9月までは新型コロナウィルス感染症が主体でしたが、何故か感染者数は減少し、10月にはインフルエンザが猛威を震っていて「この冬はどうなってしまうだろう」と心配していましたが、こちらの方も今のところ感染者数は頭打ちになっています(https://moderna-epi-report.jp)。

皆さんがマスクを外す生活に戻ってきているのに新型コロナウィルス感染症数は減少していることに明快な説明をできる方を私は知りません。また、「インフルエンザ感染者数が10月では未曾有の増加である。この冬は大変である。」というニュースもいつの間にか効かなくなりました。

 

私が、医療情報に疑いを持っているぐらいですから一般の方々もきっとそうかと思います。世の中には予想のつかないことが多いようです。私はコロナ禍で日本の社会システムに疑問を持ち、米国株を買いましたが、株価も専門家の言うようにはなりません。

 

予想に必要だと言われる指標が次々と出てくる中で、予想のできない社会に順応する力が求められている気がします。

2023年11月17日時点の医師横山啓太郎個人の意見です。

目の見えない方の睡眠

私は慈恵医大晴海トリトンクリニックの所長をしています。11月6日までフィラデルフィアで米国腎臓学会に参加していたため、長らくブログもお休みしていました。

私は時差ボケには弱く、睡眠障害に悩まされます。

「眠れなくても目だけ閉じていれば、脳への情報量が少なくなり、半分ぐらいは寝ているのと同じなので、眠れなくてもジッと目を閉じていることは大切」と昔、誰かに教えてもらったことがあります。

そんなわけで、今回はアイマスクをして眠りに入ることにしました。すると知らない間に眠ってしまいました。

「目の見えない方はどこから睡眠を認識するのだろう?」という疑問が頭に浮かんできました。そのことが、そのような方にどのような影響を与えるのだろう?

皆さんも学生時代に授業中に居眠りをしたことはあるかと思います。目の見えない方はそんな時にどんなふうに眠気と戦ってらっしゃるのでしょう?

私は糖尿病で目の見えない患者さんの診察をしたことが何回もありました。それなのに想像力がなかった自分に反省です。

想像力は、医師の最も重要な資質の1つと考えています。

 

 

2023年11月9日時点の医師横山啓太郎個人の意見です。

 

ストレスのコントロールとしての運動

血圧の管理で運動は重要であると考えられています。しかし、運動してもなかなか血圧が下がらない場合も多く、患者さんは「折角、運動したのに、血圧が落ちないのか」と思いがっかりされることも多いようです。治療として運動を捉えると、その効果の低さから長続きしないような気がします。

皆さんは、ストレスのコントロールとして運動をとらえたことがありますか?

運動をすることでコルチゾールやアドレナリンが低下し、青斑核に影響を与えることによって、ストレスに対する感情がコントロールされます。心の緊張状態を和らげてくれるのです。加えて、セロトニン(幸福感を司る化学物質)やドーパミンなど、脳内の「心地良さ」に関わる神経伝達物質量を増加させます。

私は、辛ことがあった時には、しっかり運動し、体に負荷を与えます。体の回復に伴って、知らないうちに心が回復していくことを経験します。

運動には学習と記憶を司る脳の海馬を増大させる作用があることも明らかになっており、認知症の進行に対して有効です。

 

2023年10月15日時点の医師横山啓太郎個人の意見です。

ストレスのコントロールとしての運動

血圧の管理で運動は重要であると考えられています。しかし、運動してもなかなか血圧が下がらない場合も多く、患者さんは「折角、運動したのに、血圧が落ちないのか」と思いがっかりされることも多いようです。治療として運動を捉えると、その効果の低さから長続きしないような気がします。

皆さんは、ストレスのコントロールとして運動をとらえたことがありますか?

運動をすることでコルチゾールやアドレナリンが低下し、青斑核に影響を与えることによって、ストレスに対する感情がコントロールされます。心の緊張状態を和らげてくれるのです。加えて、セロトニン(幸福感を司る化学物質)やドーパミンなど、脳内の「心地良さ」に関わる神経伝達物質量を増加させます。

私は、辛ことがあった時には、しっかり運動し、体に負荷を与えます。体の回復に伴って、知らないうちに心が回復していくことを経験します。

運動には学習と記憶を司る脳の海馬を増大させる作用があることも明らかになっており、認知症の進行に対して有効です。

 

2023年10月11日時点の医師横山啓太郎個人の意見です。