新型コロナウィルスワクチンの接種スケジュールについて

巷では新型コロナウィルス感染症拡大による第4波が懸念されています。その中で新型コロナウィルスワクチンに対する期待が高まっています。

河野担当大臣も4月から一般市民へのワクチン接種が開始されると明言されてます。

私も患者さんに、「いつ頃になったらワクチンはうてますか?」と聞かれます。

しかし、臨床現場での感覚は、まだまだかかると思います。

 

私は、大学病院に勤務していますので、すでにワクチンを摂取していますが、一般的な開業医の先生は、まだワクチンを打たれていないのです。

一般の方にワクチンを摂取することが予想されている医師会の先生方がワクチンを摂取していないとすれば、一般市民へのワクチン接種は本格的には開始されないと思われます。

 

多くの国が昨年末、あるいは今年初めからワクチン接種が開始されている現状を見ると、そのことを報道しないマスコミにも疑いを持ってしまいます。

 

※2021年3月29日時点の医師横山啓太郎個人の意見です。

桜プロジェクト

今、東京の桜は満開です。

私たち医療者は「末期の患者さんに桜を見せたいという気持ち」が強いです。患者さんは冬に症状が悪化することが多く、「春は越せないかもしれない。」ということが多くあります。

私たち医療者もご家族の方も「桜を見せてあげたい。」という共通の気持ちで入院患者さんの外泊調整など行っています。

「末期の患者さんに桜を見せるプロジェクト」は其々の患者さん毎に様々なハードルがありますが、御家族も頑張ってそのプロジェクトに全力を傾けます。

 

そして桜の季節が過ぎ患者さんが亡くなった時に「お父さんは桜を見て嬉しそうに笑っていたね。」と生前の患者さんを懐かしがります。

 

私の父もそうでした。大腸がんの肝臓転移で、春を越せるか解らなかったのですが、亡くなる年は家族で多磨霊園の桜を見に行きました。そして6月に亡くなりました。今でも母は、「お父さんは桜が好きだったからね。」と言っています。

 

しかし、思い返してみると父はそれ程桜が好きだったという記憶がありません。父は、「自分のために家族が一生懸命になっている桜プロジェクトに乗っかること」を選んでいた気がします。

桜プロジェクトは患者さんのためだけでなく、患者さんを取り巻くご家族のためにあるような気がします。

そして、末期がんの患者さんだけでなく、親しい人への桜プロジェクトは自分自身に喜びを与えてくれるのだと思っています。

 

※2021年3月24日時点の医師横山啓太郎個人の意見です。

近未来リモート診療

新型コロナウィルス感染症は日本がIT後進国であることを私たちに教えてくれました。米国の振り込み詐欺はAIがディープラーニングで進化した対応をする音声システムで行われるようになってから、それまで人が行っていた時よりもはるかに効率よく相手をだますことが出来るようになったそうです。

医療の世界でも同じようで保健指導を人間が行うのとバーチャルアドバイザーが行うのとどちらが有効であるかという研究報告が、Mueller先生から報告されました(JAMA Intern Med 2020 Sep 28)。

その結果、バーチャルアドバイザーと人間のアドバイザーは、いずれも歩行時間を週に2時間超増加させたとのことでした。

中高年245人(年齢50歳以上、平均年齢62歳、ラテン系アメリカ人98%)が対象となり、12ヵ月間での歩行時間の増加を比較しています。

新型コロナウィルス感染症の拡大により、人間は感染のリスクを避けるためリモート診療が盛んになるでしょう。そしてバーチャルアドバイザーが用いられることになると思います。人間の習慣の改善を指導するのはAIということになります。

 

このことを皆さんはどう感じられますか?そしてその機能が体内にチップとして埋め込まれたらどうでしょうか?

 

ドナルド・トランプの躍進は何を意味するのでしょうか? フェイクニュースの蔓延に対して打つ手はあるのか? 

 

それは「我思う故に我あり。」というデカルトの哲学が通用しない世界です。

 

※2021年3月21日時点の医師横山啓太郎個人の意見です。

具体化から抽象化、そして具体化へ

小さな集落で暮らしていた紀元前5世紀の頃は、集落ごとに神話が信じられていました。しかし、集落がまとまっていくと「星が神様のお告げだ。」という考え方と「星は神様のことを照らす灯りだ。」という考え方など沢山あることを初めて人々は知り、世界の共通の真理を求めるようになりました。

目の前のことだけでなく普遍的な真実を求める企ては具体化から抽象化への作業と言えるでしょう。ギリシャ哲学から現在まで続く考え方です。

具体化から抽象化の作業の効率を劇的に上げたのが科学です。科学的真理は多くの人を納得させるものです。

医学もこの潮流の中にいます。「目の前の患者さんだけでなく、多くの患者さんに当てはまる真理は何だろう?」というのは医学研究者が目指してきたことです。

 ところが、「自分はタバコを吸っていても肺癌にならない。」という自分事の主張をする患者さんと医師は対立するようになってきます。

「タバコが肺癌のリスクを上げる。」というのは科学的真理ですが、「タバコを吸っていても肺癌にならない人がいる。」のも事実です。

健康診断でも「其々の人を平均値と比べるだけで良いのか?」というのは多くの人が持っている疑問だと思います。

 

現代はAIの発達により、この問題を乗り切れるかもしれません。「タバコを吸っていても肺癌のリスクがほとんど上がらない人」を見出す医療を私たちは手に入れられるかもしれません。AIは抽象化されていたものを具体化して貴方だけの最適化された医療を提供する可能性があるのです。これは、今までの科学の流れを全く変えることを意味しています。

 

※2021年3月14日時点の医師横山啓太郎個人の意見です。

真理を求めるのが難しいということ

人と動物の違いは何か?という問いに多くの哲学者が回答しています。

その一つに「人間は選択するから」という解答があります。人から殴られた時に動物なら逃げるだけかもしれませんが、人間は「これは愛の鞭かもしれない。」と考える場合があります。「選択している:考えている」ことが、世の中の唯一の真実であると説いた哲学者もいます。

私からすると真実を追求すること自体、人間しか行わないだろうと思います。

皆さんは何を真実であると考えますか?

そう考えると「100%正しいことが少ない」ことに気が付きます。私は「100%正しいことが少ない」というのは当たり前だと思っていましたが、実は奥深い言葉だと考えるようになってきました。

今のコロナ禍であっても、そのために得た恩恵もあります。自分を見直すことが出来ましたし、通勤のストレスは減少しました。

相手が自分と異なる意見を述べている時も私の意見が「100%正しいことが少ない」ので、その部分は受け入れるように努力します。逆に相手の方に「100%正しいことが少ない」ことを認識してもらえば、妥協点も生まれてきます。

その様な雰囲気作りのために、私は相手の服を着て話を聞いてみます。相手が望む着地点を模索します。そして問題点を抽出すると同時に相手の気持ちに興味をもって質問してみます。論点となる「善悪・損得・好き嫌い」以外の話題で距離を縮めること試みます。

 

 

※2021年3月6日時点の医師横山啓太郎個人の意見です。

 

2面性を整理する。

患者さんに行動変容を促す動機付け面接法という手法があります。

習慣を変えようとする患者さんの気持ちは2面性を抱えています。「ダイエットしたい。」けれど「難しい。」という感じです。

例えば、

患者さんが「ダイエットしたい。」と言った時、

医師が「そうしたら良いですね」と答えると、

患者さんが「だけど、ダイエットは難しいですよ。」と言い出し時、

医師が「じゃあ難しいですか?」と答えると進みません。

 

患者さんが「ダイエットしたい。」と言った時、

医師が「ダイエットしたいって考えているのですね」と答えると、

患者さんが「だけど、ダイエットは難しいです。」と言い出しても、

医師が「それでもダイエットしようと思ったのですね」とダイエットする方の意見だけくみ取っていくという手法です。

 

そもそもどの様な事象でも二面性があります。二面性があることは、真実でないかもしれないと考え抜いて哲学が生まれたような気がします。「真実とは何か?」という命題を多くの哲学者が解明しようとしましたが、デカルトの「我思う我あり。」ということでさえ、その後の哲学者に批判を受けました。

 

つまり、どの様な患者さんの気持ちや状況も2面性があると思います。末期のがん患者さんでも明るく前向きな方もいらっしゃいます。

 

行動変容外来では、患者さんの2面性を整理していくことが求められていると思います。

ダイエットのやる気があまりない人も「何故やる気が全くない。」のではないのでしょうか?

 

患者さんが気付いてない逆側からの視点を提示することが有用です。

2面性を時間的視点(そもそも過去の自分、未来の自分の視点)、空間的視点(他者との比較、他者からの視点)、具体と抽象(自分だけの真理、普遍的な真理)などから分析していきます。

 

※2021年2月27日時点の医師横山啓太郎個人の意見です。

人の悩みの相談を正面からでなく斜めから受け止めた方が良い時があるということ。

私は、長年医師をやっていて患者さんの悩みをうかがうことがあります。「この病気とどう付き合って言ったら良いか解らない。」「仕事が出来なくなってしまう。」「結婚が出来なくなる。」など様々です。

その時に勿論相談を正面から受け止めてお話します。しかし、多くの場合、患者さんはその問題を長い間悩んできたことなので、私のアドバイス通りやって上手く行かないことも十分考え抜いています。相談を正面から引き受けても上手く行かないこともあるように思います。

 

患者さんは、「ただ話を聞いてもらいたい。」こともありますが、「聞いてもらうだけでは満足できない。」こともあります。

 

この状況で、私は患者さんに元気になってもらいたいということが1番大事に思っていることならば、「良く、そこまで話してくれて嬉しいですよ。」とか「ここまで深く考える人は、返って上手く行くことが多いですよ。」とか「もともと深く考える方ですか?」とか悩みの問題とは少し、焦点をずらした解答が患者さんの求めていることも少なくありません。

人の悩みの相談を正面からでなく斜めから受け止めた方が良い時がある気がします。

 

※2021年2月21日時点の医師横山啓太郎個人の意見です。