行動変容を起すキッカケになる動機付け

本日は患者さんに行動変容を起すキッカケを作る医療者のメソッドについて書いてみます。行動変容を起すキッカケになる動機付けをする時に「患者さんの行動変容へのやる気」について考えてもらうことを行っています。

先ず、「やる気を10段階でどの位のレベル」かを尋ねます。

10段階中レベル2-9であれば、何故1でなくレベル1と比べてどうしてレベル2-9であるかを説明してもらいます。

その前向きな部分を患者さんに説明してもらいます。この時に患者さんは前向きなことも後ろ向きなことも言うことが多いと思います。これを両価性と言います。ここでは、前向きな部分を拾い上げてその話を盛り上げていきます。

患者さんが言葉に詰まったら、

  • 元々、貴方は健康に対してどんな風に考えていますか?
  • このままで行った時に将来の自分は今の貴方を見てどう感じますか?
  • 健康について他の人をみて、どんな風に感じますか?
  • 健康について他の人は、貴方をどう思っていますか?

などと聞いてみましょう。

ポイントは、正しいか間違っているか?という質問でない方が話が膨らみます。好きか嫌いか?の質問は正解がないので、患者さんの考え方の整理になると思います。

 

プランが立ったら、その実現が可能になるメソッドを一緒に考えます。

  1. 目標を明確にする。何時、何処で、誰と、どの様に行うかを明確にしましょう。
  2. 簡単にする。ハードル低く。失敗して自己肯定感を損なわないように。
  3. 習慣化しやすいような環境の整備。
  4. 記録する。
  5. ダメな時に直ぐ変えるか、直ぐやり直すか?

の5つの事柄を整理していきます。この時に自己肯定感を保つこと、日常に影響を与えることを意識しましょう。

患者さんには実際にメモを書いてもらい持ち帰ってもらいましょう。

 

※2021年2月15日時点の医師横山啓太郎個人の意見です。

 

患者さんが医師を選ぶこと。

私は、大学病院に長年勤めていて、何時かは新しいスタイルの開業をしたいと50代半ばから考えていました。教授であること、学会でガイドラインを作成したこともあり、大学病院では、全国から紹介患者さんが集まっていました。

50代半ばの時に医療コンサルタントの方に開業について相談した時に「横山先生は開業には既に歳をとりすぎています。若い人は若い医師を好みます」と言われて驚いたのを覚えています。「大学病院と一般のクリニックでは全く異なります。男性の産婦人科の教授がクリニックを開業すると大学病院のように女性が来なくて大変です。」と彼は続けました。

 

私が所長を務める慈恵医大晴海トリトンクリニックは晴海トリトンスクウェア内にあり、ビジネスマンの患者さんが多いのですが、一方で月島地区のご高齢の患者さんもいらっしゃいます。

 

そこで、年配の医師と若い医師の診ている患者層の分析をしてみました。

すると

  • ベテランの女性医師の患者さんの多くは高齢の女性(世間話中心で1人当たり30分程度の外来で、若く忙しい男性の患者さんは離れてしまった可能性があるのでしょうか?。)
  • 私と若い糖尿病専門の医師は男性がやや多く幅広い年齢層
  • 循環器、呼吸器、消化器内科の女性医師も男性がやや多く幅広い年齢層

となっていました。

  • 驚いたのは、美人で有名な糖尿病の女性医師の殆どの患者さんが40-70歳の男性患者さんだったことです。

私の隣で外来をやっていても、40-70歳の男性患者さんがニコニコして診療を受けています。

大学病院の外来とは異なり、市場経済を学んでいます。

 

※2021年2月13日時点の医師横山啓太郎個人の意見です。

目で聞き、目で話す。

目はものを見るものであり、話をするのは口であるのは当たり前ですが、「目で聞き、目で話す。」という言葉を思浮かべて下さい。

目で、音を聞こうとすると耳で聞こえない音が聞こえてくることはないでしょうか?

風が桜の花びらを落とす音や光が露を照らすときの音まで聞こえる感じがします。また、言葉を発すること無く、目で話そうとすると心の奥で言葉を発する前の気持ちを相手に伝えている感じがします。

目で見ることも話すことも脳で感知したり、脳でまとめた情報を言葉で伝える訳ですが、音になる前の僅かなさざ波のような空気の揺れが存在するような気もします。

 

※2021年2月9日時点の医師横山啓太郎個人の意見です。

心筋梗塞の予防に大切なこと

2021年1月6日(水)にNHKガッテン!「激痛でも放置!?心筋梗塞の意外な落とし穴」に出演しました。

この番組は、心筋梗塞がテーマでしたが、私への取材内容は「激しい胸痛があったにもかかわらず、直ぐに救急車を呼ばなかったのはなぜか?」という問題に対する解答でした。救急車を呼ばない理由は、様々にみえても、実は「直ぐに日常を大きく変えたくない。」という、共通の考え方が奥底にあることが解りました。

 

その番組をみて、岩手で開業している友人から添付のポスターの紹介がありました。

以下の内容の啓発です。

心筋梗塞の死亡率は約40%ですが、殆どは病院にたどり着く前に命を落とします。経験したことのない胸痛や胸部圧迫感が20分以上続いた場合、躊躇なく緊急で病院に行くことが大切です。」

現在、病院での死亡率は5%には遠く及ばないそうです。そうであれば、胸痛時に如何に病院に行くハードルを下げるかが極めて重要です。

外来で肥り過ぎや喫煙のリスクを述べるよりも具体的な胸痛時の病院への行き方を提供することが医療者に求められること、患者さんが医師に聞くべきことであると思います。

 

※2021年2月3日時点の医師横山啓太郎個人の意見です。

 

ProducerかActorか?

私は、大学病院で初めて行動変容外来を開設して、今は行動変容外来のコンセプトを社会に浸透させたいと思っています。そのために、ビジネス化も必要と考えました。

多くの人と出会いました。そのうちの1人の方に「横山先生はProducerですか?Actorですか?」と質問されました。

行動変容外来のコンセプトを社会に浸透させるためにはProducerである必要があると思いましたが、一方でActorとして医療現場にいないと患者さんから学ぶことが出来ないと考え、答えに窮しました。私より、プロジェクトを強力に推し進められる医師はいますし、好印象を与える医師もいると思いました。

気を取り直して考えてみると、私は脚本家であることが最も収まりが良い気がします。アイディアを出し、Producerに発展してもらい、より良い臨床をActorと作り出していくのがしっくりきます。

 

皆さんは、Producerですか?Actorですか?それとも脚本家ですか?

 

※2021年2月2日時点の医師横山啓太郎個人の意見です。

血圧と「医療の物差し」の続き

私は、血圧が今も医療の物差しであることに疑問を持っています。

自動車のエンジニアが車を動かして性能を見るのと異なり、人は、早朝・空腹時という24時間で5分程度しかないタイミングで安静という条件で、しかも100年以上前と同じ機器で血圧を測定しています。

医療を科学と呼ぶにはあまりにお粗末な臨床の実情です。

 

そして、私は血圧が生体を評価するのに正確かどうか分からないというだけでなく、血圧が高い人が生活習慣を改善しても殆ど血圧が下がらないことを問題視しています。

 

多くの研究で、生活習慣を改善することは生命予後や心血管合併症に寄与することが解っていますが、運動や過食を控えても血圧はせいぜい数mmHgしか下がらないことが多いのです。この程度の変化は、測定する部屋の室温など様々な因子の影響を受けます。そのため血圧を下げるために生活習慣を改善しようというモチベーションに結びつきません。

血圧を下げるのには降圧剤が最も有効です。

血圧を物差しとしている医療者も生活習慣を改善より、薬物療法に軸足を置いた方が効率的であると考えてしまうのです。

 

IoTが進んで、生体の測定方法が進歩することを私は望んでいます。

 

※2021年1月27日時点の医師横山啓太郎個人の意見です。

 

血圧と「医療の物差し」

私は、血圧が今も医療の物差しであることに疑問を持っています。

自動車のエンジニアが車を動かして性能を見るのと異なり、人は、早朝・空腹時という24時間で5分程度しかないタイミングで安静という条件で、しかも100年以上前と同じ機器で血圧を測定しています。

医療を科学と呼ぶにはあまりにお粗末な臨床の実情です。

 

血圧は1733年 イギリスの生理学者Stephen Halesがウマの頚動脈にガラス管を挿入して 、その高さにより血圧値を認識したことが起源だと言われています。そして、1905年、ロシアの軍医ニコライ・コロトコフが、カフ(腕帯)で上腕の動脈を圧迫し、続いて減圧したときに生じる血管音(コロトコフ音)を聴診器で聴き取りながら血圧を測定していますが、この方法が現在行われている血圧測定法です。

 

測定法が確立されても治療薬がなければ、「医療の物差し」にはなりません。米国のルーズベルト大統領は、大統領になってから正常であった血圧がどんどん上昇し、1935年には136/78 mm Hg 、1937年には162/98 mm Hg、1941年には 188/105 mm Hg 、1944年に大統領に4選されたときは平均血圧は200mmHg以上でした。そしてヤルタ会議の時には血圧が260mmHgまで上昇し、脳出血で死亡しました(N Engl J Med, 1995 ; 332 : 1038〜1039)。ルーズベルトは「死ぬときは血圧が下がるので、血圧が高い分には問題ない。」と主張したそうです。

その後、血圧を下げる薬が開発され、製薬会社は多額の資金を投入し、臨床研究を行い、新しい薬剤の効果を証明してきました。そして血圧が「医療の物差し」になりました。

 

しかし繰り返しますが、100年以上前の測定法が、生体を評価するのに一番適しているのでしょうか?

自動車は馬力でその能力を測定していますが、勿論、馬を用いて測定するわけでなく日々測定方法は進歩していると思います。

 

また、もし血圧でなく脈拍に注目していたら、現在の生活習慣病の診療方法は全く変わっていました。

 

IoTが進んで、生体の測定方法が進歩することを私は望んでいます。

 

※2021年1月25日時点の医師横山啓太郎個人の意見です。