第3の習慣:重要事項を優先する

このブログは、7つの習慣生活習慣病診療でどのように用いたら良いかの私の考えを紹介するものです。もし、医療者ではい方は医療者を自分の健康に目を向ける立場(自分の健康を俯瞰して見る立場)、患者さんを自分の健康に対して目を向けたいけれど仕事などで時間に追われているもう一人の自分(普段の自分)と考えてみてください。医療者のマニュアルを医療者以外の方がお読みになるのも良いのではないでしょうか?ただ、医療者のマニュアルなので「患者さんに気づかせる」など上から目線に見える記述はご勘弁ください。

第3の習慣:重要事項を優先する

 

事柄に優先順位をつけることに習熟する

私たちにとって「健康」は、人生の重要事項の1つといえるでしょう。生活習慣病を上手に管理している患者さんは、健康が「優先すべき重要事項」であることを認識できている人だと思います。

多くの人が「健康が大切」と思っているのにもかかわらず、日常生活で優先できないのは、なぜでしょうか。仕事の忙しさやストレスを理由に挙げる人は少なくありませんが、それらの理由は他者から与えられるものです。したがって、「仕事やストレスを口実に健康管理を疎かにしてしまう人は、主体性を発揮していない人」といえます。

しかし、主体性を発揮している人であっても、「あれもこれも大事」と思っていては、健康管理は疎かになりがちです。限られた時間のなかで重要事項を確実に行うには、日常生活における事柄に優先順位をつける必要があります。しかし、それは意外と難しいことで習熟する努力が必要です。

 

事柄に優先順位をつけることは、時間を効果的に使うこと

7つの習慣では、「時間管理の本質を一言で言うなら『優先順位をつけ、それを実行する』に尽きる」と述べられています。1)

日常生活における事柄に優先順位をつけるツールとして、「日常生活における事柄を緊急度と重要性から4つに区分した図」(図)1)を活用するのが有効です。4つの区分のうち、優先すべき重要事項は「緊急で重要」と「緊急でなく重要」の2つの領域に入る事柄です。

「緊急で重要」な事柄は、緊急に対応する必要があり、かつ重大な結果につながるものです。しかし、そこばかり意識しているとそれだけで手一杯になってしまいがちです。

時間を効率的に使うには、「緊急で重要でない」「緊急でなく重要でない」要件は避けつつ、「緊急でなく重要」な事柄に時間をかけ、「緊急で重要」な事柄が占める割合を小さくしていく必要があります3)

 

健康管理のための時間を組み込んだ1週間の計画を立てる

「緊急でなく重要」な事柄に時間をかけ力を入れれば、「緊急で重要」な事柄が占める割合は徐々に小さくなっていきます。しかし、初めは「緊急でなく重要」な事柄に使える時間を生み出すために、「緊急で重要でない」「緊急でなく重要でない」事柄に使う時間を削るしかありません。

そのためには、今なすべきことをしっかりと認識することが大切です。ビジョンと価値観を明確に表現したミッション・ステートメントを定め、そこから導き出される長期的な目標を定めるとよいでしょう。生活習慣病の患者さんにおいては、生活習慣病の改善・合併症の予防が長期的な目標になるでしょう。

そのうえで、「緊急でなく重要」な事柄に意識を向けさせ、動機づけ、それらの事柄に時間がとれるよう促すツールとして、1週間の計画を立てることがお勧めです。5)

1週間の計画は、果たすべき役割、1週間で達成したい目標に基づいて作成します。生活習慣病の患者さんの場合は、1週間にどれぐらい運動する、などが目標となるでしょう。

なお、計画を立てる際には、優先すべきことをスケジュールに組み込むことが大切です。日々の用事の優先順位を決めるだけで、予定外の出来事への対応や人との約束などに的確に対応できるようになります。

またすべての事柄を自分で対応する必要はなく、技術や知識をもっている人に任せれば(デリゲーション)、もっと自分にとって重要な活動にエネルギーを注ぐことができます。スポーツジムでのトレーナーの指導や管理栄養士の栄養指導などがデリゲーションにあたります。

患者さんと一緒に、健康管理のための時間を組み込んだ1週間の計画を立ててみてはいかがでしょうか。

医療者でない方も、メモをとってご自分の健康管理を整理することが大切です。

 

 

■臨床に役立てる

<事例>

【対象】生活習慣病の患者さん

【目標】長期的目標として、生活習慣病の改善・合併症の予防

【具体的方法】

相手の視点に立つ:日常生活で健康管理を優先できていない。

対処すべき問題点:健康管理の時間が計画に組み込まれていない。

対処方法のアドバイス

・患者さんと一緒に、健康管理のための時間を組み込んだ1週間の計画を立てる。

・スポーツジムでトレーナーの指導を受けることや管理栄養士の栄養指導を受けることなどを患者さんに助言する。

健康管理は重要で第II領域「緊急でなく重要でない」に属しますが、日常の中では、どうしても時間に追われ、そのことを意識できません。計画表や記録、あるいは家族やトレーナーの力を借りることで、健康管理の重要性を認識することができます。

 

11月16日時点の医師横山啓太郎個人の意見です。

文献

  • ティーブン・R・コヴィー, 完訳 7つの習慣 30周年記念版. 東京, FCEパブリッシング キングベアー出版, 2020年, p.200.
  • ティーブン・R・コヴィー, 前掲書: p.197.
  • ティーブン・R・コヴィー, 前掲書: p.204.