行動変容と政府や都の声明

私は2016年我が国の大学で初めて慈恵医大で行動変容外来を設立し、生活習慣病の患者さんの診療にあたっています。

新型コロナウイルス感染症に対しての安倍総理の非常事態宣言を始め、小池都知事の声明の中にも「行動変容」という言葉が躍っていますが、どのような会見の開き方が、国民に行動変容を起こすのに適切だったのでしょうか?
 
ネット上には批判的なコメントが並んでいますが、未経験の新型コロナ感染症に対して正しい選択だけが行われるとは思われません。

 

人は、「善と悪」「損と得」「好きか、嫌いか」の3つの基準で行動を選択します。
「善と悪」「損と得」は得られる情報によって、私たちそれぞれが判断します。

そのため、政治家はどのようなことをすればコロナウイルス感染症が拡大しないか、どの様に今後国として進んで行くか等の情報を適切に伝えることが必要です。
一方、政治家は感染症の専門家ではないですが、伝えた情報が実際に起こった状況と異なった場合、政治家が発言の責任を負うことになると、政治家の言葉が信用されなくなる悪循環に陥ります。

マスクについて厚生労働大臣は自分が感染を防ぐためには必要ないと説明していましたし、WHOも今でも同様の見解ですが、安倍総理は国民にマスクを配布することを決めています。
我が国の新型コロナ感染症対策は他国と比べて成功した点も多いと思いますが、政治家に求められるのは「好きか、嫌いか」の感情に訴える発言です。

もし、国民にマスクを配布することが一番の方策でないとすれば、安倍総理が「国民の皆さんの声を聞いて、医療現場にその費用を当てることにしました。新しいコロナ感染症の戦いで過ちがあるかもしれませんが、私は国民と共に頑張っていきたい。」と発信すれば、国民の支持を受け、政府の信頼は上がったと思われます。

私が取り組んでいる行動変容外来では、患者さんに「ポテトチップを食べないで」と言うのではなく「ポテトチップも一つ食べだすと止まりませんよね」という会話から始まります。

専門領域の情報収集や判断は専門家に任せ、政治家には真摯で正直な発言が求められます。

※2020411日時点の医師横山啓太郎個人の意見です。