医療の立場から新型コロナウイルス感染症に対する向き合い方を考える

世の中は新型コロナウィルス感染症に対する情報に溢れています。
しかし、コメンテーターもウィルスの専門家、感染防御の専門家、呼吸器内科の専門家、医療統計の専門家がいますが、全てのことが解る人はないと思いますし、番組側の意図や尺の問題もあり、少し発言が偏るなどの問題があります。 

例えば、PCR検査について我が国のPCR検査数が少なすぎるということに関して異なった意見が出ていました。
PCR検査数を増やさなければ、症状がなく潜在的な患者数を把握できないので増やすべきだ」という主張がされる一方、「多くの国民がPCR検査を求めて医療機関を受診すると医療機関クラスターになる。」という主張がマスメディアや、ネットで流通していました。

現在、医療者の防護服やマスクが不足し、かかりつけの街の開業医はPCR検査を行うことの恐怖心を持っています。
数値としても、イタリアの感染者の10%が医療者であり、医療者は一般の方の数十倍の感染リスクを背負っていることが分かります。
東京に置き換えると、1万人の感染者が出た時、その人口比率は1000人に1人ですが、症状があって病院に通う人という条件を加えると、感染者の比率はその10倍以上になるかもしれない中で、開業医の先生は毎日感染のリスクにさらされることになります。
開業医の皆さんは、咳や熱があって受診する患者さんに対し、感染防御して診察にあたりますが、倦怠感や腹痛でいらした患者さんにその緊張感をもって診察にあたることは難しいことです。

今後、新型コロナウィルス感染症の患者数が増えた時に、現在の新型コロナ・コールセンターは感染が疑わしい人の相談にのることが出来なくなることが予想されます。
その際、PCR検査が陽性の方も軽症の場合に自宅にいることを推奨されたときに、その重症度を見極めるということが、新たに医療の人間にとって重要な役割になります。
具体的には、自宅やドライブスルー方式で陽性の患者さんを自宅か入院かを振り分ける外来が必要となり、クリニックの先生の一部はそこを担って頂くのが良いと思っています。

そして、そのフェーズになると、現在の新型コロナ外来の数では、とても対応しきれないため、新規検査施設と新規外来施設開設の準備が求められます。
また、患者の立場としても変化が生じ、新型コロナ感染症検査陽性の時、症状があって入院した状況(家族とも面会できない入院生活)と、軽症で自宅にいる状況(家族に感染を広げないことや症状が悪化した時の受診先)への準備が必要になるということも考えられます。

 

※2020年4月1日時点の医師横山啓太郎個人の意見です。