医師としての実地学習

94歳の母が心不全になり入院し、退院予定日の前日に食器を洗おうとして転倒し、左大腿骨折を起こしてしまいました。入院中に患者が骨折した時に、患者やその家族は病院の管理を批判したい気持ちになるかもしれませんが、私は医療者として避け難い事故であることも理解できます。

それでも循環器の主治医の先生から「実は、朝、先生のお母様が転倒し、大体頸部骨折をしました。」と連絡を受けた時に「あーそうですかー」と2回答えてしまいました。

私は、医師として介護保険申請書類を何度も書いていますが、親の骨折を機に何も知らなかったことを痛感しました。

 

一般的には、大学病院の入院期間は術後2週間程度でリハビリ病院に転院することを知りました。転院した方が機能回復が進むそうです。リハビリ病院の入院期間は1ヶ月以上でその間はコロナ禍なので面会はできません。

私は、自宅で母と同居しています。1階に母が住み2階に私たち家族が住んでいます。入院前は、母は自立していて簡単な料理を作ることもできましたが、今後はトイレも一人で行くことが難しいかもしれません。新聞などは読むことができていましたが、随分、頭もボヤッとしてきていました。

先ず、私が最初に選択することは、「リハビリ病院を介さないでトイレに行くことも自立できない状態で、母を自宅に帰す」か「1ヶ月以上面会もしないで母が認知症になってもリハビリ病院を介して、自宅に帰す」かということでした。「リハビリ病院で、1ヶ月以上面会もしないと、どうの程度、認知機能が落ちるのか?」という情報は、個人差にも寄るところが多いと思いますが、誰に聞いても解りません。私は、「リハビリ病院を介さないで自宅に帰ること」を選択しました。

次に、区の老人福祉センター介護保険の申請を行いました。要支援あるいは要介護などで、支払う額は異なりますが、いずれにしてもリハビリは1回1時間程度を週に2回しか介護保険では利用できません。自宅から歩いて直ぐのところに老人のリハビリ施設はありましたが、老人福祉センターの方に伺うと「回復期リハビリとは異なると思います。」ということでした。私は訪問リハビリを自費でお願いすることを選択しました。自費でもリハビリのスタッフの確保が重要なので訪問リハビリに予約しました。1日2回で2万円、1ヶ月で60万円、それに手すりなどの自宅の改装が必要と思われます。

それだけ準備しても夜間のトイレなどの見守りが必要なようです。コロナ禍で家庭内でも94歳の母とはソーシャルディスタンスを保ってきたのに・・・

 

高い授業料ですが、医師としては実地学習になっています。

 

9月22日時点の医師横山啓太郎個人の意見です。