我が国でも今後起こり得る医療崩壊のイメージ

新型コロナウィルス感染症拡大により医療崩壊が起こることは避けるべきであることです。4月の時点で、我が国も医療崩壊寸前でした。その頃、NYやイタリア・スペインなどで医療崩壊が起こり、人工呼吸器を付けられないまま亡くなられた患者さんの報道や亡くなられた方の集団埋葬の映像が流れていました。

 

しかし、一般の方に医療崩壊のイメージは中々つかみにくいのではないでしょうか?

新型コロナウィルスが及ぼす医療崩壊が、皆さんが受ける医療にどの程度影響を与えるのでしょうか?

 

我が国の現状はどうかと言いますと、現状でも医療崩壊は起こっていませんが医療制限は起こっています。大学病院はコロナ患者さんを受け入れるために、通常の患者さんの病床稼働率を60-70%に抑えて運営されていることが多いので、既に、通常受けられる検査や手術が受けれなかったりしています(医療崩壊を起していたNYの基幹病院では通常の患者さんの病床稼働率を約30%でコロナ患者さんの病床が70%という報道がされていました。)。我が国の感染者数や死亡者数が欧米諸国の数十分の1であっても我が国の医療は大きな影響を既に受けています。このまま入院患者数が増加すれば、確実に医療崩壊に近づきます(そのスピードは週の単位でなく月の単位だと思われますが、今までの政府の対応であれば月の単位でも対応が遅れることが予想されます)。

 

市中感染が広がり、コロナを疑っていない人の入院により、院内感染が広がります。そして、通常の患者さんの病床稼働率を約30%に縮小します。そうなると、入院が必要な人の3人に1人しか入院できないことになります。

 

最初は、高齢者が重症化しますが、無症状なコロナ感染症の若い人でも、他の病気に罹患したら大変なことになります。

熱中症の診断を受けて緊急入院した患者が、実はコロナに感染していて、院内感染が起こってしまった。」というのは医療関係者なら想像できるのですが、「入院していた元気なコロナ患者が、入院中に盲腸に罹り緊急手術になってしまった。」というのは、医療関係者もあまり想定していないことです。

その時の手術室の状況はとても大変な状況になるのです。

これはコロナ病棟で隔離された患者さんが一般の患者さんのゾーン(手術室)に入っていくことを意味します。様々な感染対策のために手術開始の時間が遅れることもあるでしょう。医療者はN95マスクを着用して手術を行うことになるでしょう。マスクをしてマラソンが出来ないように、術者が長時間N95マスクを着用して手術をすることが容易ではありません。そのことが、手術の成否にかかわる場合もあるでしょう。また、ゾーニングが壊れて院内感染が生じるリスクにもなるのです、

 

西欧の一部の国々で起きたようなレベルまでは行かない可能性はあるものの、医療に制限を加えざるを得ないことによって、すべての年齢層の方が当たり前と思っていた医療が受けられなくなります。

※2020年8月4日時点の医師横山啓太郎個人の意見です